ルノー・カングー・クレアティフ(ディーゼル)/7DCT 419万円。新型は1.5リッターディーゼルターボ(116ps)と1.3リッターターボ(131ps)を設定。クレアティフは黒バンパー&スチールホイール標準
ルノー・カングーは、日本で最も親しまれているフランス車の1台である。現行3代目は、欧州では廉価版をエクスプレスという名称の独立した車種として分離。カングーは従来以上に上級移行を目指している。
造形は直線基調の機能主義的なスタイリング。リアゲートは観音開き。日本のユーザーニーズを考慮しての採用だ。ちなみにカングーの乗用車仕様で観音開きが用意されるのは日本だけだ。
ボディサイズは4490×1860×1810mm。全長は旧型比で210mm伸びたものの、全幅は30mmの拡大に留めており、大きくなった印象はあまり受けない。むしろ低めのノーズ、傾いたウインドスクリーンなど、ワゴンらしさが高まった。
魅力は圧倒的に広く、使い勝手に優れた室内にある。シートは先代と比べるとしっかりとし、ルーテシアやキャプチャーの感触に近づいた。後席は頭上のストレージボックスがなくなったのは残念だが、シートの座り心地はフロントと遜色ない。ラゲッジスペースが広くなったこともポイントである。荷室容量は定員乗車時でも先代より115リッター広い775リッター、驚くべき空間を持つ。伝統の観音開きと相まって、アウトドアシーンなどでの使いやすさはさらに高まった。
パワーユニットは、1.3リッターターボ(131ps/240Nm)のガソリンと、1.5リッターディーゼルターボ(116ps/270Nm)を、7速DCTとのコンビで用意している。駆動方式はFFだ。
プラットフォームはルノー/日産/三菱アライアンスが開発した新世代のCMF-C/Dを使用し、各部をカングー専用に新設計した。定評の快適性はそのままに、ステアリングのギア比をクイックにし、サスペンションはロールを抑えるなど、ハンドリングのレベルアップを図っている。
走りはスムーズで逞しい。ガソリンエンジンの加速は気持ちよく、街中も高速も得意だ。ただし力の余裕は、1.5リッターディーゼルのほうが上である。トルクが低回転から豊かなので回転を上げずに走れるうえに、静粛性も上々。ディーゼルのほうが快適だと思うユーザーは多いかもしれない。
高速道路での直進安定性は、ルノーの例に漏れず盤石。どこまでも走っていける気になる。そんなシーンで役立つのが、充実した先進運転支援システム。ロングクルージング能力は飛躍的に高まった。
ハンドリングも大きな美点である。ステアリングの反応はクイックで、ロールは抑えられており、背の高さを忘れて自然に曲がっていける。先代も見た目から想像する以上の走りの持ち主だったが、現行型はドライバーズカーという言葉を使いたくなる。
カングーはヨーロッパでは商用車としても多く使われている。生まれ故郷では仕事の相棒としても鍛えられてきた。新型は、このクルマの根っこにある骨太な部分を、いままで以上に感じた。乗用ワゴンとして快適で楽しく、ガンガン使ってもへこたれないタフな相棒。新型はそんなキャラクターを鮮明にしている。