【ポルシェの実力/スペシャルモデル試乗】「砂漠の覇者」が40年の時を経て復活。911ダカールは刺激的な走りとフレンドリーな個性が融合したスーパー4WD

911ダカール/価格:8DCT 3099万円。911ダカールはパリ〜ダカール・ラリー優勝40周年記念車。カレラ4GTS(992型)をベースに車高を50mm高めるなど各部をオフロード仕様にモデファイ。往年のロスマンズカラーはop(ラリーデザインパッケージ)。ロゴは「Rothmans」ではなく「Roughroads「と洒落ている

911ダカール/価格:8DCT 3099万円。911ダカールはパリ〜ダカール・ラリー優勝40周年記念車。カレラ4GTS(992型)をベースに車高を50mm高めるなど各部をオフロード仕様にモデファイ。往年のロスマンズカラーはop(ラリーデザインパッケージ)。ロゴは「Rothmans」ではなく「Roughroads「と洒落ている

往年のカラーリングをまとった4WDファイター、気分高まる

 ポルシェ911の4WD史は1980年代に始まる。4×4のコンセプトカーを発表するにとどまらず、1984年にはパリ・ダカールラリーに「911カレラ3.2  4×4」で参戦し優勝をさらった。ポルシェ初のパリダカ勝利だ。車高を上げたロスマンズカラーの911は多くのクルマ好きを魅了した。その中身はその後、1986年に誕生する伝説のマシン「959」の先行開発システムだったという。

 伝説の勝利からちょうど40年、世界限定2500台の911ダカールが登場した。試乗車は栄光のロスマンズカラーをまとっていた。ブルーとホワイトの2トーンカラーにレッドとゴールドのストライプを加えている。特徴的なロゴはタバコ名(Rothmans)ではなく「ラフロード(Roughroads)」。ゼッケンの「953」はパリダカ優勝車、カレラ3.2 4×4の開発コードだ。洒落が効いている。

リア

室内

 リアに搭載されたフラット6は480psを発揮する3リッターツインターボ、これに8速PDKを組み合わせている。

 車高はスタンダードのスポーツサス仕様に比べて5㎝の上昇(前後のリフトアップシステムによってさらに3㎝上げることも可能)にすぎないのだが、それでも異様な迫力で見る者に迫ってくる。

 広げられた前後のホイールアーチと、深いトレッドを刻んだ大きなピレリタイヤ(前245/45ZR19/後295/40ZR20)がそう思わせる要因だろう。このタイヤは専用開発品。特殊なカーカス構造を採用することによりオフロードだけでなくオンロードでの性能も担保する。ホイールの白もこのカラーリングにはよく似合う。

 911ダカールは、タイヤの関係で最高速度こそ240km/hに制限されているが、車高を上げた「ハイレベルモード」でも170km/hまで出せる。悪路でも圧倒的なパフォーマンスを見せつけるのだ。ちなみにオフロードにおける多くの場面で911ダカールの性能はSUVのカイエンを上回るらしい。

シート

タイヤ

 運転席に座ってドアミラーを見るなり唸った。リアフェンダーの膨らみは憧れのカラーリングで、その向こうにこれまた小さい頃に憧れたポルシェターボのようなウイングが見えていたからだ。

 ドライブそのものはスタンダードの911と変わるところはない。余計な緊張をせずに歴史的なカラーリングの特別な911を走らせることが可能だ。

 最大の魅力は車高を上げたことによる運転のしやすさ。視点が高くなって見晴らしがいいだけではない。911のようなスポーツカーを運転しながら最低地上高の心配はいらない。SUVのように路面の凸凹や段差を気にすることなく自在に走れる。見知らぬ道や初めてのコンビニも何ら気兼ねなく入っていけた。駐車場の輪止めを気にする必要もないのだ!

 ワインディングロード(残念ながら舗装路面だったが)に舞台を変えても、やはり抜群の走りを披露した。見た目からは想像できない剛性のあるタイヤのおかげで、オフロードカーの範疇を超えたハンドリング性能を見せつける。480psを生み出すフラット6は相変わらずパワフルで、その速さには飽きることがなかった。
 ロードカーとして蘇った伝説の911。手に入れた人が羨ましい。911ダカールは究極のデイリー911である。

エンブレム

諸元

メーター

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