メルセデス・ベンツV220d EXCLUSIVE long Platum Suite/価格:9SATC 1362万円。最新モデルの足回りは快適なエアマチック仕様。高速時の安定性も優秀。エンジンは2リッターディーゼルターボ(163ps/380Nm)
高級ミニバンと呼ばれるマルチパッセンジャービークル(MPV)の分野は日本勢が圧勝、が常識だろう。実際、ヨーロッパのクルマ好きが来日して真っ先に乗りたがる国産車といえばトヨタのアルファードだし、お金持ちが持って帰りたいと駄々をこねるのは決まってレクサスLMである。
そんな日本市場を嫌ってか、海外からのMPV刺客は、コンパクトクラスを除くと、このところほとんど見かけなくなっていた。過去にさかのぼって成功例を探してみても思いあたるのは本家本元だったクライスラー・ボイジャー(本当にいいミニバンだった)くらい。VWも随分前に諦めた(BEVのID.BUZZは期待大だ)。
もっともメルセデス・ベンツのミニバン、Vクラスは地道にずっと輸入されてきた。だが正直、日本で使うには装備が甘すぎ、機能性は劣るし、商用車くささの残る見た目もドライブフィールも気になった。長所は高速域の安定感のみ、あとはベンツ・マークのステータスくらいだった。
メルセデスは高級車作りに長けたブランドである。Vクラスだってそれなりに頑張って進化させてきた。けれどもそれ以上に国産高級ミニバンの装備や機能が充実し、なかなか追いつけなかった。専用設計にはやはり敵わない。だからVクラスがマイナーチェンジしたと聞いても、所有する満足度でアルファードを上回ることなどきっとないと思っていた。実物を見るまでは。
試乗会場には2種類のフェイスが用意されていた。ひとつはいかにも最近のメルセデス風だったが、もうひとつは古風な顔つきで、ボンネットにはシルバーアローマスコットまで見えた。大きなディッシュタイプホイールは昔のS600を彷彿とさせる。見た目のゴージャスさは十分だ。
乗り込んで見れば、ダッシュボードデザインもグッと洗練されエレガントな雰囲気になっていた。2列目、3列目シートは立派で国産勢に負けていない。少し前からもう少しで追いつけそうなレベルにはなっていたけれど、今回の大規模改良でやっと追いついたというイメージである。
ドライブフィールはより磨きがかかっていた。最廉価グレード以外にはエアマチックサスペンションを装着。これが実にいい仕事をする。
開口部の広いビッグボディにもかかわらず、しっかりとした骨組に守られているかのような堅牢さは以前からの美点。最新モデルは動きに滑らかさが加わったことで街中から高速まで上質なドライブフィールになっていた。中でもコーナリング中の安定感はお見事。大きなサイズを感じさせない。
実績のある2リッターディーゼルターボ(163ps/380Nm)は、車重2530kgのボディを過不足なく動かしてくれる。加速の際のサウンドが耳障りではあるものの、決して興醒めな類の音ではない。クルージング状態になれば、会話の邪魔になることもない。
特筆すべきは2列目シートの乗り心地のよさだった。以前は「座ると荷物になった気分」だったが、シートはもちろん取り付け部にも工夫を施したのだろう。これなら家族も満足してくれるはずだ。