2024年10月、アウトランダーPHEVがマイナーチェンジした。現行モデルは2021年デビューだから、少し早めではあるが、長めのモデルサイクルを鑑みるといいタイミングかもしれない。それに日々のアップデートが求められる昨今、インターフェイスの進化はユーザーにとって大きなメリットとなる。
主な改良点だが、いちばんのトピックスは電池性能の向上だろう。リチウムイオンバッテリーを刷新、単体出力で60%、容量で10%アップした。具体的にはEV走行時の距離が約20km増え、100km以上のEV走行を可能としている。そもそも従来の80km超えでも十分だったが、これでさらに先進性が高まったといえるだろう。平日は電気だけで近所を走り、週末はガソリンも使って遠出するのが、このところのPHEVのトレンドだ。新型は同時にシステム最高出力を約20%向上させ、EV走行時の力強い加速を実現。高速道路の合流をよりスムーズに行えるようにしている。このあたりはロングドライブでの疲労軽減にも大いに役立つ。また、今回エクステリアにも手を入れ空気抵抗値を下げた。これは燃費向上につながる。
乗り心地も変わっている。サスペンションのセッティングを見直し、標準装着タイヤを替えた。快適さと運動性能向上の両立を目指した結果だ。そしてこれに合わせるようにパワーステアリングのアシスト力やS-AWDの制御も最適化している。
デザイン面では一見大きな変更は見受けられない。完成度の高い意匠はキープコンセプトで引き継がれた。グリルの一部と前後のスキッドプレート、アルミホイールあたりに手が入ったくらいだ。ボディカラーは写真のムーンストーングレーメタリックが加わった。
インテリアでは9インチだったセンターモニターが12.3インチに拡大されているのがポイント。見やすくなり機能も充実した。コネクティッド機能の拡張が行われたのはうれしい。Googleのストリートビューも見られたりする。この他には全グレードにヤマハと共同開発した音響システムが搭載されるなど乗員の快適装備を充実させている。
グレードは4種類で定員はエントリーグレードのMのみ5名だが、それ以外は7名乗車も選べる。価格は500万円前半から。アウトランダーPHEVはエコカー減税や国や地方自治体からの補助金があるのがうれしい。補助金しだいではひとつ上のグレードが選べるかもしれない。
新型アウトランダーPHEVはひと目でそれとわかるスタイリングをしている。完成度の高いインパクト大なデザインはほぼそのまま継承。実は細かなリファインを受けているのだが、「威風堂々」のコンセプトどおり、迫力あるマスクは健在である。
実際に走らせるとその違いは思いのほか大きく、わかりやすい。マーケットニーズに合うよう上手い具合に進化させている。
個人的に従来車との違いを感じ取れるのは、2021年にリリースされたアウトランダーPHEVを1年間テストドライブしていたからだと思う。当時試乗会で高い仕上がりに感動し、ロングタームテストが実現した。スタイリングも乗り心地もプラグインハイブリッドシステムの出来栄えも素晴らしいと思えたのだ。とくに乗り心地には驚いた。国産車にはない輸入車のような懐の深い味わいを感じたからだ。
従来モデルを愛用した立場で分析すると、新型は乗り心地がマイルドになり、高級感が増した。ダンパーの減衰圧とバネレートを見直した成果だと思う。路面からの入力を縮み側で吸収し、長いストロークでキャビンをフラットに保つような感覚だ。思い返すと、従来型は20インチだと路面状況によっては少し硬すぎるシーンがあった。それが気になり、試乗車を預かる際は18インチのオプションホイールに履き替えてもらった。そのほうが乗り心地が柔らかくなるからだ。
ところが、新型は20インチでも適度な柔らかさがあり、さらに快適になっている。聞くところによると、これには従来型に対するオーストラリアからのフィードバックが関係するらしい。路面状況のよくないエリアでは、従来型の足だと少々硬すぎたようだ。そこで、開発陣はテストを重ねこのしなやかな足を生んだ。
誤解してほしくないのは、単にソフトにしたのではないということ。そのベクトルに進みながら同時にしっかり感も強まっている。コーナリングもそうだし、速度が上がった際の安定感もレベルアップした。この辺はドイツのアウトバーンでの使われ方を意識していると思われる。新型は従来売られていなかったヨーロッパでの販売をスタートさせたからだ。彼の地では、時速200km/hに近い領域でどれだけしっかりした足を作り、クルマを安定させるかが勝負となる。
というのが新型アウトランダーPHEVの乗り味だ。上質で高級感のあるセッティングがクルマをさらに格上げしたと自信を持っていえる。