【注目モデル試乗】BMW×トヨタの技術が融合したFCV、iX5ハイドロジェンは未来の自動車シーンの注目度をズバリ分析

BMW iX5ハイドロジェン。BMWは2013年にトヨタと共同でFCV(燃料電池車)を開発する契約を締結。iX5ハイドロジェンはその成果。BMWはゼロエミッションビークルの主役をBEVに置いているが、FCVも投入することで送電網などのインフラ投資を抑制できると試算する

BMW iX5ハイドロジェン。BMWは2013年にトヨタと共同でFCV(燃料電池車)を開発する契約を締結。iX5ハイドロジェンはその成果。BMWはゼロエミッションビークルの主役をBEVに置いているが、FCVも投入することで送電網などのインフラ投資を抑制できると試算する

世界で公道実証実験がスタート。市販は2020年代後半を想定

 車載タンクに貯蔵した水素と空気中の酸素を結合させて発電する燃料電池を電気自動車に応用したFCV(燃料電池車)は、バッテリーの充電に長時間を要するBEV(電気自動車)と異なり、エネルギー源である水素をほんの3分間ほどで充填できることが最大の魅力である。ただし、BEVでさえ充電施設の不足が普及の妨げになっていると指摘される現状を鑑みるにつけ、ゼロベースも同然の状態から水素ステーションの拡充が必要となるFCVの普及は「絶望的に難しい」と、最近では捉えるようになっていた。

スタイルシステム しかし、FCVの試作車、iX5ハイドロジェンをお披露目したBMWは、「インフラは1系統よりも2系統のほうが効率的」と主張する。つまり、BEV1本でいくよりも、BEVとFCVの2本立てとしたほうがインフラ負担は少なくて済むというのだ。

 すべてのクルマがBEVに置き換われば、現在の電力網では容量的に間に合わず、発電所を含め電力設備を強化しなければいけないのは自明の理。さらにいえば、一戸建てに暮らす家庭だけでなく、マンションなどで生活する自動車ユーザーに対しても十分な台数の充電施設を用意するとなると、充電施設の形態や運用方法などを含め、これまでにない投資が必要になってくることが予想できる。

 つまり、BEVが不得意とする領域までBEV1本で通そうとするから無理が生じるのであって、BEVとFCVを適材適所で活用したほうが社会全体の効率を改善できるというのがBMWの主張である。この考え方にはうなづける。

2台インパネ 今回は「旧世代」のX5をベースに開発されたiX5を、改良され進化したX5・xDrive50e(PHEV)と比較しながら試乗し、その将来性を考えてみることにした。
 乗り始めてすぐに気づくのは、iX5のほうがX5よりも圧倒的に乗り心地が滑らかで快適なこと。その理由の大半は、iX5がランフラットでない通常のタイヤを履いていたことにある(X5はランフラットタイヤを装着)。もちろん、ランフラットタイヤには安全性面で大きなメリットがあることはよく承知しているが、それでも、これだけ乗り心地に差があると、いささか複雑な気持ちになってくる。

 電気モーターで駆動力を生み出すFCVの走りはBEV同様、静かでスムーズ。しかも、後輪を駆動するモーターの出力は合計で401psとパワフル。最長504km(WLPT)とされる航続距離を含め、クルマとしての完成度、実用性に何の不満もない。

 試乗を終えて都内に戻る帰り道、水素ステーションを訪れたが、機器故障のため現在は営業を行っていないという。このときは、まだ水素がたっぷりと残っていたので事なきを得たものの、インフラの充実は必要不可欠であることを再認識した。地球に優しい社会の形成には「水素エネルギーを幅広く活用する」という社会的な合意が求められることは間違いないだろう。

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