【誉れ高き血統】ハイブリッドを身近にした地球に優しい環境対応車。最新型は走りと造形でクルマ好きを魅了

トヨタ・プリウスZ(2リッター/FF)/価格:THS 370万円。新型は1.8リッター(KINTO専用)/2リッター・HEVと、2リッター・PHEVをラインアップ。駆動方式はHEVがFFと4WD(i-Four)、PHEVはFF。プリウス伝統のワンモーションフォルムながら、鮮烈な個性を放つシルエットに進化した

トヨタ・プリウスZ(2リッター/FF)/価格:THS 370万円。新型は1.8リッター(KINTO専用)/2リッター・HEVと、2リッター・PHEVをラインアップ。駆動方式はHEVがFFと4WD(i-Four)、PHEVはFF。プリウス伝統のワンモーションフォルムながら、鮮烈な個性を放つシルエットに進化した

世界初の量産ハイブリッド、1997年デビュー

 1990年代、バブル崩壊後の日本の自動車メーカーは暗黒の時代に入る。そんな中、トヨタは「このままのクルマ作りでいいのか?」と、21世紀のあるべきクルマ像を模索していた。その答えが1997年末に登場した世界初の量産ハイブリッド車、プリウスだった。

プリウス01

初代01

 1.5リッターエンジンとモーターの綿密な制御により、当時の同クラスセダンの10.15モード燃費が14~15km/リッターだった時代に、約2倍の28km/リッターという低燃費を実現。さらにCO/HC/NOxの排出量は当時の規制値の約10分の1と、すべてが群を抜いていた。しかし、ハンドリングを含めた乗り味は粗いうえに、回生ブレーキのフィールには大きな違和感があった。とはいえ初代プリウスは、これまでのクルマとは違う「プラスα」が備えられていた。価格は215万円。いまでは当たり前となったハイブリッドの基礎を築き上げた存在として、果たした功績は非常に大きい。

 以降、プリウスは「環境に優しいクルマ」という軸をぶらすことなく進化を続ける。だが現行の5代目でその立ち位置を少し変えた。それは「環境にいいのは当たり前、その先にも挑戦」という、従来のプリウスにはない「個性」を付加したのである。開発陣は新たな個性を2つ盛り込んだ。ひとつは誰が見てもひかれる「デザイン」。そして、もうひとつはドライバーを虜にする「走り」だ。

プリウス走り

 デザインと走り、このキーワードは歴代モデルも決して無視してきたわけではない。だが最後は「燃費」のために犠牲になっていたのも事実だった。新型の開発陣は自らの呪縛を解き放ち、「クルマとしていい」という道を選択する。結果、5代目プリウスは、カローラの上級に位置するスペシャルティカーに生まれ変わった。

現行5代目は鮮烈スポーツルック! 走りはクルマ好きに響く完成度

 デザインは2代目から続くワンモーションフォルムながら実に鮮烈。ワイド&ローのプロポーションとルーフ頂点を後方に下げたことに加えて、低いボンネット、寝かせたフロントウィンドウ、線ではなく面で抑揚を与えたグラマラスなサイド、薄型一文字ライトを配したリアが目を射る。ハッチバックというより「4ドアクーペ」と呼びたくなるスタイリッシュなフォルムに変貌した。

プリウス リア

ノーズ

 インテリアはトヨタ車共通の水平基調のコクピットデザインをベースにプリウス用に最適化。メーターはbZ4Xから採用のバイザーレス式を水平展開。インパネシフトは廃止され、シフトレバーはセンターコンソール上に移動された。居住性はデザイン重視で前席優先だと思われがちだが、後席はルーフラインライニングの工夫とシート角度の最適化によって頭上スペースを確保、+50mmのホイールベースによる足元スペース拡大、前席形状の最適化とリアドアのウィンドウ面積を大きく取る工夫(そのためにリアドアに電子ラッチ採用)で、想像よりも閉塞感の少ない快適な空間に仕上がっている。

インパネ

シート

 走りの進化はどうか? ハイブリッドシステムは1.8リッターと2リッターの2本立て。主力の2リッターは従来モデル比約1.6倍となるシステム出力196psを実現。PHEVは2リッター版をベースにリファイン。システム出力は232ps、0→100km/h加速6.7秒とパフォーマンスは実用車の域を超え、スポーツの領域に足を踏み入れている。シャシーは先代から採用されたTNGAプラットフォーム(GA-C)だが、これまでの知見をフィードバックした第2世代にアップデート。タイヤは主要モデルには先代比2インチアップとなる19インチを採用した。

 新型を走らせて驚いた点は、冗談抜きに下手なスポーツカー顔負けのレベルにあることだ。
 具体的に説明すると、パワートレーンは一般道ではアクセルを踏むと瞬時にスッと走り出す俊敏さ、高速では力強さが衰えない伸びのある加速と、全域で力強さを実感する。日常域では「ヨッコラショ」と加速、高速ではエンジン音だけ唸り加速がリンクしない先代とは別物だ。静粛性はエンジン音だけでなく風切り音やフロアからの振動も封じ込まれ、クルマ全体で静かになっているのがよくわかる。

エンジン

タイヤ

 フットワークはカローラ同様、一連のクルマの動きに連続性のある「自然で素直なハンドリング」を基本に、適度にスポーティなキャラクターが与えられた。ドライバーとクルマとの一体感やコントロール性の高さは下手なスポーツモデル顔負け。走りの総合力はVWゴルフと比べても遜色ないレベルに到達している。

 PHEVはこれに加えて、思わず「速い!!」と声を上げる加速力(2リッターターボ搭載のスープラSZ並み!!)と、日常は「ほぼEV」として使える利便性(EV航続距離87km)を備えている。

 筆者は歴代すべてのプリウスに乗ってきた。旧型までは、一度たりとも「走りが楽しい」と感じたことはなく、「燃費はいいけどトヨタでいちばんつまらないモデル」だと思っていた。だが、5代目は違う。トヨタでいちばん面白いモデルになった。これまでプリウスは一般的なクルマ好きには「関係のないモデル」の代名詞だった。だが5代目はクルマ好きにとって初めて「自分事」になるプリウスである。

【ルーツ物語】初代は「21世紀に間に合いました」のキャッチで登場!

初代

 1997年12月、トヨタは世界初となるHEVシステムを搭載したプリウスを発売した。プリウス(Prius)とは、物事の先に立つことを意味するラテン語。先進性を示すネーミングである。トヨタは、爆発的に進行する地球温暖化に対処するクリーンかつ劇的な省エネルギー車の開発を急いでいた。プリウスはその回答だった。開発は困難を極めた。内燃機関と電気モーターの有機的なカップリングを完成させ、全体をひとつのシステムにまとめなければならなかったからだ。初代プリウスは1995年秋の第31回東京モーターショーにコンセプトカーを出展。1997年10月に市販モデルを発表、12月に発売された。1.5リッターエンジン(58ps)とニッケル水素バッテリーによって駆動される電動モーター(30.0kW)を組み合わせ、燃費を2倍に引き上げた結果、CO₂排出量は約2分の1、NOxなどの有害排出ガスは規制値の約10分の1に抑えていた。

初代メカ

トヨタ・プリウス主要諸元

エンブレム

グレード=2リッター HEV・Z(FF)
価格=THS 370万円
全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1560mm/リア:1570mm
車重=1420kg
エンジン=1986cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=112kW(152ps)/6000rpm
最大トルク=188Nm(19.2kgm)/4400〜5200rpm
モーター最高出力=83kW(113ps)
モーター最大トルク=206Nm(21.0kgm)
WLTCモードハイブリッド燃費=28.3km/リッター(燃料タンク容量43リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:26.0/31.1/28.2)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

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