【人とクルマの物語】モータージャーナリスト、九島辰也氏は、いま「ほしかったクルマ」に熱中。ジャガーとアルファで趣味のクルマ遊びを満喫

九島氏は2025年に、かねて“ほしかった”2002年式ジャガーXKRを購入。XKRは4リッターV8スーパーチャージャーを搭載したリアルスポーツ

九島氏は2025年に、かねて“ほしかった”2002年式ジャガーXKRを購入。XKRは4リッターV8スーパーチャージャーを搭載したリアルスポーツ

クルマは「人生の先生」、その歴史と背景に学びがある

 齢還暦を過ぎて所有するクルマに対する考えが変わってきた。「ほしいクルマ」ではなく、「ほしかったクルマ」に乗ることを第一にしている。現在所有する4台のうちの2台がそうで、今回撮影してもらうこととなった。

九島さん01

 2025年に購入したジャガーXKRはまさにそんな一台だ。1996年頃だったと思う。当時『Car Ex』編集部員で新型車としてメディア向け試乗会に参加したり、特集用に広報車をお借りして撮影したりした。その頃のXKクーペの印象はエレガントなスタイリングとラグジュアリーなインテリアを持つまさに大人のクルマ。それはいまもそのままだが、30代だった自分には分不相応でしかなかった。その意味でようやく乗っていい年齢に達したと思う。ちなみに、今回のご縁はスーパーチャージャー搭載の2002年型XKRだが、スタンダードのXK8でもよかったし、後期のブラックナイトにも憧れていた。

 中古車の場合はまさに“ご縁”だと思う。友人のショップ、ビスポークストーキョーのストックにあったのをネットでチェックしていたが、まさかそれを買うとは思わなかった。

 きっかけは2025年のAUTOMOBIL COUNCIL初日。篠原社長が私に「先輩、初日に売約済みのプレート貼りたいです」と語りかけた。その問いかけに二つ返事で購入を約束した。中古車の購入きっかけはそんなものである。誰かに背中を押してもらわないと前に進めない。

ジャガー01

2台並び

 1980年型アルファロメオ2000スパイダーベローチェに関しては“赤いクルマ”として探していた。2024年の還暦を記念しての購入だ。“赤いちゃんちゃんこ”の代わりである。これまで30歳でメルセデス・ベンツEクラス、40歳でポルシェ911、50歳でクラシックカーと決めてきたことの延長線だ。

 クラシックカーは1967年型トライアンフ・スピットファイアを購入。ドンガラのボディからフルレストアした。ボディはメルセデスのオブシディアンブラックに塗装し、内装は濃い目のブラウンで統一。ドアミラー、カーペット云々とゼロからクルマをつくるのは楽しい。そのもようは当時『カーマガジン』で連載させてもらった。

 スパイダーベローチェの購入きっかけはイタリア車の販売で知られるコレツィオーネ社長成瀬氏のひと言。ゴルフ仲間の彼とラウンド中「そういえば、九島さんが以前ほしいといっていたスパイダーが今度入ってきますよ。色は赤です」と。でもってそのホールが終わらないうちに購入を決意した。とくに1980年型というのが面白く思えた。私のスパイダーは長いモデルライフの中の第2世代(1970年から83年)。つまり、1960年代の設計のまま進化した熟成形である。キャブ車はシンプルだけど壊れると面倒だからね。なるべく手のかからない代物を探すのがポイントとなる。クラシックカーの場合、故障がストレスになって乗らなくなっては自分もそうだし、クルマも可哀想である。

アルファ

 直近所有する2台についてお話ししたが、私のクルマ選びのポイントはブランドにある。まずはブランドのことを知ってそこに感銘し、自分に合ったクルマを選ぶのが流儀だ。とくに、1995年以降自動車雑誌に関わってからはその傾向が強くなった。それまでも18歳の時のアウディ80から始まり、1979年型フォード・サンダーバードやE24型BMW633CSi、1985年型ポンティアック6000STE、ダットサントラック720型ロングベッド、いすゞ117クーペ、W123型メルセデス・ベンツ230Eなどに乗っていたが、若いころはブランドをそれほど意識していなかった。それよりも映画や雑誌で目にしてほしくなったりした。

アウディ

ポンテ

 ところが自動車メディアに携わるといろんな知識が入ってくる。中でも海外取材が多かった分、海外メーカーに関して詳しくなった。国際試乗会に参加したり、当時華やかだった国際モーターショーでメーカーの首脳陣をインタビューしたりしたからだ。しかもまだネット環境が今日のように整備されていなかったので、海外出張の都度、英語の文献を買い漁って帰国し、それを読み込んだ。最初はアメリカ車、次に英国車、ドイツ車そしてイタリア車といった順番だった。ビッグ3が元気だった時代、コルベットやキャデラック、マスタングを知ることは大切だったし、2000年以降のクライスラーは斬新で興味深かった。

 その中で一番興味を引いたのはジープ。1941年の誕生前夜からの歴史を知るといろんなことがわかった。機能美とはこういうことなのかと理解する。そこで、そのころ所有したのがXJ型ジープワゴニア、YJラングラー、TJラングラーといった面々。YJは1987年型でAMCの生産ラインで生まれた最終年。まさかAMCのオーナーになれるとは思わなかっただけに感動した。

Jeep

 ジープに関しては現在も興味は尽きない。ルビコントレイルでのジープジャンボリー、ジープサファリの他、世界中のオフロードコースを走った実体験を含め見守っていきたい。というか、もう一度所有する気満々。JK型かJL型の3ドアをベースにカスタムしたいと思っている。リフトアップしてマッドテレイン履いて、デューリーランプ付けて。タイガーオートの山中社長に相談だ。よく、スポーツカーを“エモーショナルなクルマ”と表現するが、個人的にはジープもそうだと思っている。所有することでどこか道なき道を走りたくなるこのオフローダーもまた“エモーショナルなクルマ”なのだ。

 英国車ではベントレー、アストンマーティン、ジャガー、レンジローバーを含むランドローバーをブランドとしてリスペクトしている。英国車の場合、ひとつのブランドを勉強するとあれもこれも繋がるから興味深い。ただ、知れば知るほど手を出せなくなるのも英国車。1919年誕生のベントレーや1913年創業のアストンマーティンはそもそも上流階級向けのカーブランドだ。

九島さん02

ジャガー走り

 そこで親近感を感じるのはジャガー。サー・ウイリアム・ライオンズはベントレーの2分の1、もしくは3分の1の価格で同性能のクルマを中産階級に提供するためこのブランドを立ち上げた。で、これまで3台のジャガーを所有。直6を積んだXJSと2002年型3.2ℓ・V8のX308 XJ、それと冒頭のXKRだ。デザイナーのジェフ・ローソン好きである。

 というように、18歳から今日までたくさんのクルマとつきあってきた。ポルシェ911もそう。996型カレラから空冷の993型タルガに買い替え、その後997型カレラに9年間乗った。911から学んだことは多かった。

 いずれにせよクルマは人生の先生。各モデルには背景があり、そこに戦争や恐慌、技術革新などが積み重なっている。クルマに接することで色濃い人生を送れることは間違いない。

【プロフィール】
九島辰也(くしまたつや)/モータージャーナリスト、PRコンサルタント、イベントプロデューサー。電通グループで広告営業に携わりその後出版業界へ。出版社では、自動車誌、メンズ誌、ゴルフ誌、機内誌、サーフィン誌などの編集長を経験。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、(社)日本葉巻協会会員。東京・自由が丘出身

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