
GR GTはかつての2000GT、レクサスLFAの系譜を継承したトヨタ・グループを代表するスポーツフラッグシップ。ロングノーズの下に新開発4リッターV8ツインターボを搭載するHEV車。2027年の市販を予定
2025年12月5日、トヨタ(GAZOO Racing)およびレクサスは、新型スポーツカーGR GTとレーシングカーGR GT3のプロトタイプ、そしてLFA Conceptを世界初公開した。
この3台のスーパースポーツは、トヨタ・グループのイメージリーダーとして企画された。ベテランから若い世代のクルマ好きまで、あらゆる人に「憧れ」と「走る楽しさ」を届ける宝石のような存在である。
発表会の場で、サイモン・ハンフリーズ執行役員は、「この10数年でレクサス、GRだけでなく、トヨタ・グループのブランド全体が大きな変化を遂げました。トヨタは“エモーショナルさ”を取り戻しました。3台はGRとレクサスの“スポーツカーの頂点”であり、すべてはレースで鍛えたプラットフォームから“限界への挑戦”というGRの思いを、トヨタのすべてのクルマに貢献していく存在です。われわれはどうやればクルマにストーリーを吹き込むことができるのかがわかってきました。このクルマで、お客様に新たなレベルの“没入感”を体験していただきたいと考えました」とスピーチ。
続いて登壇した豊田章男会長は、30年前にマスタードライバーだった成瀬弘氏とふたりでクルマづくりを始めたこと、ニュルブルクリンク・サーキットに赴いたとき欧州のライバルたちとの圧倒的な性能差を実感し、まるで「あなたたちにこんなクルマづくりできないだろ?」といわれたように感じたこと。さらにその悔しさが間違いなくいまの原動力になっていること。やっと初代LFAができたとき、成瀬氏が「(抜かれることなく)前だけを見てニュルを走れたのは初めてだ」とうれしそうに話していたエピソードを披露。
そして「現在は同じ思いでクルマを作ってくれる仲間がたくさん増えた。仲間たちとクルマづくりをしながら、成瀬氏が残してくれたクルマづくりの秘伝のタレを未来に残していきたい。GRヤリス、GRスープラ、GR86、GRカローラ水素エンジン、スーパー耐久、ニュルブルクリンク……そしてこのクルマたち。モリゾウと仲間たちのもっといいクルマづくりは、過去から現在、そして未来に繋がっていきます!」と力強く宣言した。
今回発表された3台は、1960年代に登場し「国産初のスーパーカー」と称された「2000GT」や、レクサスが2010年に限定発売した「LFA」に続くフラッグシップスポーツカーというポジショニングである。ユニークなのは、「トヨタの式年遷宮」でもあること。具体的には、前回のLFAに携わったベテランから若手への技能・技術伝承を行いながら、パフォーマンスを高めるためトヨタ初の新技術を積極的に取り入れ、今までにない数多くのチャレンジを重ねて誕生した。ちなみに式年遷宮とは、日本の神社で行われる伝統行事で、一定の年数ごとに社殿を新しく建て替えて神様を遷す儀式のことである。
3台は「低重心」「軽量・高剛性」「空力性能」という3つのキーとなる要素を追求することを核とし、共通の思想のもとで開発が進められた。
GR GTは、GAZOO Racingが掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」をさらに深化させたGRのフラッグシップ。「公道を走るレーシングカー」をコンセプトに、ハイメカニズムを積極的に取り入れ、「ドライバーファースト」を掲げる一体感のある運動性能を追求している。
パワーユニットは、新開発の4リッター・ V8のホットインサイドのツインターボに1モーターを組み合わせたハイブリッドである。モーターは主にパフォーマンス向上に活用される。システム最高出力は650㎰以上、最大トルクは850Nm以上、最高速度は320㎞/h以上(すべて開発目標値)と圧倒的だ。
エンジンのドライサンプ化はもちろん、トランスアクスルレイアウトの採用により前後重量配分は45対55の理想値を実現。トランスミッションとデファレンシャルは、極太の炭素繊維強化プラスチック製トルクチューブで前後がつながれている。駆動方式をFRとしたのは、限界領域での扱いやすさを考えてのこと。リアに搭載されるトランスミッションは新開発の8速ATとなる。
車両骨格は、トヨタ初のオールアルミニウム製スペースフレーム。さまざまな検討の結果、低圧鋳造式を採用したという。ボディパネルにはカーボンや樹脂など軽量素材を適材適所に配し、強くて軽いボディに仕上げた。車両重量は1750㎏以下に抑えている。
スタイリングはロングノーズの純スポーツカールック。空力性能の理想をあらかじめ定めてからデザインを決めていく手法で作り上げた。実車を見ると非常にスポーティかつ迫力のある造形に仕上がっていた。インテリアも上質で機能性重視で仕立てられていて、このまま市販される雰囲気が感じられた。
GR GT3は、GR GTをベースとした、市販車をベースとするモータースポーツカテゴリー、FIA GT3規格を念頭においたレーシングカーだ。こちらは見るからにレーシングカー然としており、フロントフェンダーのダクトやサイド出しマフラー、大きなウイングを備えた外見はもちろん、コクピットにはロールケージが張り巡らされている。
GR GTはHEVだが、GR GT3は同じV8ツインターボでありながらレギュレーション上の理由でHEVではない。同じエンジンながら排気管の取り回しが異なり搭載位置も後方に移されている。
目指したのは「勝ちたい人に選ばれる、誰が乗っても乗りやすいクルマ」である。新型GR GTおよびGR GT3は2027年ごろの発売が予定されており、これからさらに開発が進められ、詳細な情報が随時公開されていくことになる。
もう1台のLFA Conceptは、BEVスポーツのコンセプトモデル。2025年8月の米国モントレー・カーウィーク2025、10月のジャパンモビリティショー2025で披露されたLEXUS Sport Conceptの名称を変更したモデルだ。
「低重心」「軽量・高剛性骨格」「空力性能の追求」という、GR GTとGR GT3と同じ思想のもとで、BEVのスポーツカーとしての可能性を示すべく開発が進められている。
「Discover Immersion」をキーワードにBEVとしての最適なパッケージングを追究し、GR GTやGR GT3由来の走行パフォーマンスと、次世代でも色褪せない価値を宿すデザインを意識したとのこと。展示されていた初代LFAと見比べると、たしかに隔世の感があった。
現段階ではコンセプトカーなので市販時には各部が変更されそうだが、前出の2台ともども、いままでのトヨタ車ひいては日本車では想像もつかなかった超弩級のパフォーマンスを披露してくれるに違いない。大いに期待して待つことにしよう。
