レクサスがBEV専用モデルのRZをマイナーチェンジ。バッテリーEVシステムを刷新してモーターの高出力化、航続距離の伸長、充電所要時間の短縮を実現。新たなドライビング体験をもたらすステアバイワイヤシステムを採用するなどして走りの楽しさをさらに追求した「RZ550e“F SPORT”」を新規にラインアップ
レクサスは2025年12月24日、BEV専用モデルのクロスオーバーモデル「RZ」をマイナーチェンジし、合わせて“F SPORT”モデルの「RZ550e“F SPORT”」を新規に設定して、同日より発売した。

▲レクサスRZ550e“F SPORT” 価格:950万円 全長4805×全幅1895×全高1635mm ホイールベース2850mm 車重2120kg 乗車定員5名 一充電走行距離(WLTCモード)582㎞ 交流電力量消費率(WLTCモード)144Wh/km 写真のボディカラーはブラック&ニュートリノグレー
車両価格は以下の通り。
RZ350e“Version L”:790万円
RZ500e“Version L”:850万円
RZ550e“F SPORT”:950万円

▲レクサスRZ500e“Version L” 価格:850万円 全長4805×全幅1895×全高1635mm ホイールベース2850mm 車重2070kg 乗車定員5名 一充電走行距離(WLTCモード)579㎞ 交流電力量消費率(WLTCモード)147Wh/km 写真のボディカラーはイーサーメタリック
今回の改良は、走りのコンセプト“The Natural”を徹底的に追求して「Lexus Driving Signature」をさらに深化させたことがトピック。具体的には、バッテリーEVシステムを刷新してモーターの高出力化、航続距離の伸長、充電所要時間の短縮を図るとともに、BEV専用プラットフォーム(e-TNGA)の改良や新四輪駆動力システム「DIRECT4」の進化、音や振動の発生源を抑制する源流対策、次世代の操舵感覚をもたらすステアバイワイヤシステムの採用などを実施して、プレミアムクロスオーバーEVとしての魅力度をいっそう高めている。

▲レクサスRZ350e“Version L” 価格:790万円 全長4805×全幅1895×全高1635mm ホイールベース2850mm 車重1950kg 乗車定員5名 一充電走行距離(WLTCモード)733㎞ 交流電力量消費率(WLTCモード)120Wh/km 写真のボディカラーはソニックカッパー
注目のパワートレインから解説していこう。BEVシステムはバッテリーセルの改良に加え、搭載セル数を増加させた新開発の大容量リチウムイオンバッテリーを採用。総電力量はRZ350eとRZ500eが74.69kWh、RZ550eが76.96kWhを確保する。また、モーターに新設計の2XM型交流同期電動機を搭載し、最高出力167kW(227ps)/最大トルク268Nm(27.3kg・m)へと高出力化。モーター自体はRZ500eおよびRZ550eに前後(AWD)、RZ350eに前のみ(FWD)配備し、システム最高出力はRZ550eが300kW(407.8ps)、RZ500eが250kW(339.9ps)、RZ350eが165kW(224.3ps)を実現した。さらに、インバーターの効率を高めた新型のe Axleを組み合わせることで、全開加速性能と最高速性能を高めるとともに、中間加速においてもより伸び感のある爽快な走りを達成。0→100km/h加速はRZ550eが4.4秒、RZ500eが5.3秒、RZ350eが7.5秒を成し遂げる。BEVシステムおよび大容量リチウムイオンバッテリーの冷却に水冷式を採用して、高い動力性能に寄与させたことも訴求点である。

▲BEVシステムはバッテリーセルの改良に加え、搭載セル数を増加させた新開発の大容量リチウムイオンバッテリーを採用。総電力量はRZ350eとRZ500eが74.69kWh、RZ550eが76.96kWhを確保する。モーターには新設計の2XM型交流同期電動機を搭載。最高出力167kW/最大トルク268Nmを発生する
一充電走行距離はWLTCモードでRZ550eが582km、RZ500eが579km(20インチタイヤ装着車、18インチタイヤ装着車は629km)、RZ350eが733km(18インチタイヤ装着車、20インチタイヤ装着車は648km)へと伸長。また、交流電量量消費率はWLTCモードでRZ550eが144Wh/km、RZ500eが147Wh/km(20インチタイヤ装着車、18インチタイヤ装着車は135Wh/km)、RZ350eが120Wh/km(18インチタイヤ装着車、20インチタイヤ装着車は132Wh/km)を達成する。また、バッテリーの大容量化とバッテリーパック構造の最適化、車載充電器の充電性能向上および制御の最適化により、充電性能をアップ。急速充電では最大約30分以上の充電所要時間短縮を図り、特に低温環境下においては新たに組み込んだ「電池プレコンディショニング機能」により、充電開始前からあらかじめ電池温度を最適な状態に調整すること で、充電所要時間の短縮を達成した。
レクサスならではの走りの味の深化と新しいドライビング体験を具現化したことも訴求点。電動化技術を活用した四輪駆動力システム「DIRECT4」の駆動力配分の制御を見直し、さらに優れたトラクション性能と操縦安定性を実現する。発進時および直進加速時は、車両のピッチングを抑え、ダイレクトな加速感が得られるように前輪:後輪=60:40~0:100程度で制御。コーナリング時には車速や舵角などの情報を用いて、走行状態に合わせて駆動力配分を80:20~0:100で最適に制御する。また、ターンインではクルマがすっきりと曲がっていけるようフロント寄りの駆動力へ配分。コーナー脱出時は車両挙動の乱れが無く加速できるよう、各輪の接地荷重に応じたトルク配分制御とすることで、気持ちの良い旋回フィーリングや狙い通りのライントレースを成し遂げた。さらに、「統合車両姿勢安定制御システム(VDIM)」との連携によって、フラットな乗り心地と優れた操縦安定性に加え、緊急時の危険回避性能を高い次元で確保。複数のシステムを統合的に制御するドライブモードセレクトのセッティング変更も図って、安心・安全かつさらなる走りの楽しみを具現化した。
シャシー面では、サスペンションの設定を見直すことで運動性能と乗り心地を向上させる。マクファーソンストラット式のフロントサスペンションは低周波側のアブソーバー減衰力を上げることでよりフラットな乗り心地を追求し、一方でダブルウイッシュボーン式のリアサスペンションでは減衰力の可変幅を拡大し低周波と高周波の特性を最適化することで、ばね上の動きの緻密なコントロールを実現。優れた操縦安定性の確保と乗り心地の向上により、Lexus Driving Signatureをよりいっそう深化させた。
ボディ構造の改良も敢行。走りの味に統一感を持たせるためにレクサスがモデル横断で取り組む走りの“味磨き”の知見を取り入れながら、フロントエンド、フロア、リアエンドの剛性を強化する。具体的には、ラジエータサポートまわりとリアのボディ後端の剛性を向上。フロントのラジエータサポートまわりには板厚、接合の強化を施し、リアにはブレースを追加することで局所的なねじり変形を抑え、ステアリング操作に対するすっきりとリニアな反応を実現した。
静粛性および耐振性のさらなる向上を図った点も見逃せない。後席下にはリアフロアサイレンサーを設定し、ノイズを抑制。また、ドアトリム、シートサイドガーニッシュ、バックドアトリムの防音材を高性能化するとともに、シートサイドガーニッシュ部の使用範囲を拡大した。さらに、防音性能を持つトノカバーの採用やバックドアトリムアッパー、デッキボックスへの防音材追加など徹底した取り組みにより、ロードノイズや風切り音を低減する。ボディフロアパネルに高減衰接着剤を採用して、不快な振動を抑えて質感の高い乗り心地を実現したことも特徴である。

▲静粛性および耐振性のさらなる向上も敢行。後席下にはリアフロアサイレンサーを設定してノイズを抑制。ドアトリム、シートサイドガーニッシュ、バックドアトリムの防音材を高性能化するとともに、シートサイドガーニッシュ部の使用範囲を拡大する
エクステリアについては、機能的本質や動的パフォーマンスに根差し、独自性を追求したデザインを継承。内燃機関のないBEVの機能的な必然性から、フロントマスクは“スピンドルボディ”という塊造形とすることで、レクサスBEVならではのオリジナリティを表現する。また、ヘッドランプおよびバンパーコーナーをブラックアウトし、センターのスピンドルボディを強調することで、一目でレクサスBEVとわかるアイコニックな顔を創出。さらに、バイトーンの外板色ではフロントからルーフまでソリッドブラックを配し、スピンドルボディをより強調するカラーリングとした。足もとにはRZ500eにブラック塗装+切削光輝の20インチアルミホイールを、RZ350eにブラック塗装+ダーククリア切削光輝の18インチアルミホイールを標準で配備している。
内包するインテリアは、レクサスのクルマ作りに根づいている人間中心の思想を、さらに進化させた新しいコクピット設計の考え方“Tazuna Concept”を継続して採用。また、ウルトラスエードにレーザー加工によるグラフィックを施した、レクサス初となるドアトリム表皮を設定する。さらに、ドアの開閉時にドアトリムオーナメントに揺らぐような光の模様を投影して室内空間に華を添えるダイナミック陰影イルミネーション(マルチカラー)や、艶炭フィルムのセンターコンソールオーナメントパネルなどを配備して、先進的かつプレミアム感あふれるキャビン空間を形成した。インテリアカラーにはヘーゼル、オラージュ、グレースケールを用意。オプションとして、調光機能ON時にはパノラマルーフの鮮明度を向上させ、調光機能OFF時には遮光性を高めた改良版の調光機能付パノラマルーフを設定している。
走りの楽しさをさらに追求したRZ550e“F SPORT”に関しては、従来のコクピットに大きな変革をもたらす「ステアバイワイヤシステム」を導入する。同システムは従来のタイヤとステアリングが機械的に結合するシステムとは異なり、電気信号によってタイヤの動きを制御するため、路面からドライバーに伝わる振動を効果的に抑制すると同時に、路面の状態をセンシングし運転に必要な情報のみをドライバーへ伝達。BEVモデルならではの、人とク ルマが一体となる、直感的で快適な全く新しいドライビング体験を創出している。
また、進化したステアリング制御とともに「ステアバイワイヤシステム用ステアリングホイール」を採用する。このステアリングホイールでは中立位置から左右約200°の範囲でステアリング操作が可能となり、従来ステアリングホイールのように大きく回転させる必要がないため、より快適な操舵性を提供。また、車速に応じたステアリングギヤ比の制御により、低速運転時の車両の取り回し性の向上や、ワインディングでの軽快な走行を可能にする俊敏性、自動車専用道路などの高速走行時における高い安定性も実現した。上下部分にリングのない形状によってドライバーの視線を自然と前方に誘い、BEVの爽快な走りに集中できるコクピットに仕立てたこともアピールポイントである。
さらに、パドルシフト(スイッチ)を使用してマニュアルトランスミッションを操作するような感覚で駆動力を操作する新機能「インタラクティブマニュアルドライブ(Interactive Manual Drive)」をレクサス車で初採用する。同システムは8速の仮想有段ギヤを持ち、アクセル開度と車速に応じて算出した仮想パワーソーストルクにパドルシフト(スイッチ)で選択した仮想ギヤ段のギヤ比を乗じて駆動力を出力。また、エンジンを搭載しているかのようなサウンドの演出にもこだわったほか、最適なシフトアップ/ダウンが視覚的にも判断できるよう専用のシフトガイドメーターを配備した。
“F SPORT”らしいアレンジも内外装の随所に施す。エクステリアは機能に根差したアイテム、具体的にはピアノブラック塗装フロントロアバンパーモール、ブレーキダクト、ピアノブラック塗装リアスポイラー、ブラック塗装リアバンパーロア、20インチ“F SPORT”アルミホイール(スーパーグロスブラックメタリック塗装)+エアロホイールカバー(マットブラック&ピアノブラック塗装)などを配備して、優れた空力性能と操縦安定性の実現。ブレーキキャリパーはブルーで塗装(フロントLEXUSロゴ入り)する。ボディカラーには硬質なライトグレーにハイライトでメタリックをほのかに含ませることでスポーティな走りを表現した新色「ニュートリノグレー」を設定し、モノトーン5色とバイトーン4色という計9色の展開とした。
インテリアは専用の内装色としてブラック&ダークグレーを設定。BEVならではの内なる力強さとスポーティな走りをイメージし、ブラックとダークグレーの色と素材にブルーステッチのアクセントを組み合わせる。また、センターコンソールオーナメントパネルにはマイクロジオメトリックパターンフィルムを張り、ドライバーの足もとにはアルミ製スポーツペダル&フットレストを配備した。シートについては、表皮一体発泡工法を用いたL tex表皮のフロントスポーツシートを装着している。
足回りにも専用セッティングを実施。アブソーバー減衰力、コイルスプリングのばね定数ともにスポーツ仕様にふさわしいチューニングを施す。また、ラジエータサポート部にブレースを追加することで、ラジエータサポートの横方向の変形を抑制してステアリングの応答性を高めた。
なお、レクサスはRZのマイナーチェンジに合わせて特別仕様車の「RZ600e“F SPORT Performance”」を設定する。車両の概要に関しては別記事で紹介しよう。
