![日産フェアレディ300ZXツインターボ(Z32型)。Z32型は1989年2月の北米シカゴ・ショーでワールドデビュー。同年7月に日本仕様を発表し「スポーツカーに乗ろうと思う」のキャッチコピーで人気を集めた。カタログでは「開発基本テーマは[1990年代をリードする新世代の本格スポーツカーを作ること”であった]と宣言。ラインアップは2シーターと2by2の2シリーズ。それぞれにツインターボ(280㎰/39.6㎏m)と自然吸気(230㎰/27.8㎏m)を設定した。足回りは4輪マルチリンク式、全車が脱着可能なガラスルーフを備えたTバールーフ仕様(一部グレードに未装着車も設定)だった](https://www.caranddriver.co.jp/wp-content/uploads/2025/12/a8be481f2dc08054fa16de1b9fb91078-1-1024x609.jpg)
日産フェアレディ300ZXツインターボ(Z32型)。Z32型は1989年2月の北米シカゴ・ショーでワールドデビュー。同年7月に日本仕様を発表し「スポーツカーに乗ろうと思う」のキャッチコピーで人気を集めた。カタログでは「開発基本テーマは[1990年代をリードする新世代の本格スポーツカーを作ること”であった]と宣言。ラインアップは2シーターと2by2の2シリーズ。それぞれにツインターボ(280㎰/39.6㎏m)と自然吸気(230㎰/27.8㎏m)を設定した。足回りは4輪マルチリンク式、全車が脱着可能なガラスルーフを備えたTバールーフ仕様(一部グレードに未装着車も設定)だった
フェアレディZは日本を代表するスポーツカーであり、世界を代表するスポーツカーの1台でもある。「何を大げさな」と怒られそうだが、ボクは本当にそう思っている。
スポーツカーはもともとスパルタンなクルマだった。快適さや、運転のしやすさを邪道だとか、堕落だとかいう人もいる。しかし、ボクはそう思わない。それがなければスポーツカーという乗り物は、とうの昔に消えてしまっていたはずだ。スポーツカーだから、もちろん高いレベルのエキサイトメントが備わっていてほしい。それさえしっかりしていれば、快適性や運転のしやすさなどは優れているのにこしたことはない。ポルシェ、フェラーリといったピュアスポーツカーたちも近年は競うように快適性を、運転のしやすさをレベルアップしてきた。それは堕落ではなく、進化なのだ。
しかし、進化という美名のもとに、エキサイトメントまで失ってしまうことには絶対に反対だ。そして、なぜフェアレディZが世界を代表するスポーツカーの1台なのか、という答えはここにある。そう、1969年秋にデビューしたフェアレディZは、過去のスパルタン感覚のみのスポーツカー像にとらわれることなく、新しい時代、とくにスポーツカーの成功を左右する巨大マーケットのアメリカが強く求めた優れた快適性、運転のしやすさ、メンテナンスフリーといった要求を、率先して取り入れたパイオニアだった。
その結果、イージーな運転に慣れ、エアコンに慣れたアメリカのユーザーはスポーツ感覚と快適性が両立したフェアレディZに飛びついた。スタイルのよさとバリュー・フォー・マネーが、一気に人気を加速させた。かくして“スポーツカーの近代革命”を遂げたフェアレディZは、アメリカで1カ月に5000〜7000台という信じられないような巨大なマーケットを切り開くのに成功したのである。
ここまで話せば、フェアレディZが世界を代表するスポーツカーの1台だという意味は、わかってもらえただろう。
4代目になる現行モデルのルックスは、非常にいい。美しさと強い存在感が高次元でバランスしている。フェアレディZならでは伝統をしっかりと残しながら、新しいトレンドを巧みに取り入れている点も見事だ。エクステリアに加え、コクピットのデザイン/仕上がりもいい。広く快適でありながら、スポーツカーとしてのタイトなフィールを巧みに織り込んでいる。ドライビングポジションもOKだ。
走りの性能も良好である。だが、残念ながらNSXやスカイラインGT-Rのレベルには到達していない。最強ユニットは、3ℓのV6ツインカム24Vターボだ。280㎰/39.6㎏mのパワースペックは十分に魅力的だし、走らせればそれなりに速い。だが、フィーリングがよくない。トップエンドは詰まりぎみで、気持ちのいい伸びきり感は味わえない。音質的にもガサガサしている。
スポーツカーは、エンジンがクルマの魅力を大きく左右する。それだけに、このエンジンの感触は辛い。そうした観点から見れば、230㎰/27.8㎏mのNAエンジンのほうがずっと魅力がある。とくに常用域のピックアップはとても気持ちがいい。音質にしても不快感はない。ボクがフェアレディZを買うなら、NAエンジンを選ぶ。
シャシー性能はどうだろう。高速での直進性のよさ、レーンチェンジや緊急回避的なシーンでの安定性の高さはさすがのレベルだ。コーナリング中のパワーオフやブレーキングによる姿勢の乱れが、しっかり抑え込まれている点にも拍手を送りたい。これらはスーパーHICAS(電子制御4WS)の採用によるプラスが大きい。
ハンドリングは実用域では軽快で素直な性格を示す。このあたりの味付けは実にいい。激しく飛ばさなければ、フェアレディZのハンドリングは、ほとんどのユーザーに満足感を与えるに違いない。
しかし、本気でワインディングロードを攻め込む状況になると、ひ弱さというか、物足りないポイントが顔を出す。エンジンのフィーリングや足回りなどの磨き込みがうまくいけば、フェアレディZの魅力は大きく跳ね上がることは間違いない。
※CD誌/1992年1月26日号掲載
