
2代目プレリュードは「FFスーパーボルテージ」を掲げて登場。端正なクーペフォルムと圧倒的に低いリトラクタブル式ライトを備えたノーズライン、そして充実した快適装備が評価され大ヒット。「デートカー」という新ジャンルを構築した。初期型のパワーユニットは1.8リッターのデュアルキャブ仕様。ラインアップはXX/XZ/XCの3グレード構成だった
プレリュードがモデルチェンジした。旧型は、女性によく似合うクルマだった。新型はどうだろう。女性よりも男性のほうに似合うクルマだ、とボクは思う。理由は、アピアランスがアグレッシブになり、加えてボディサイズが大型化した点にある。ニュー・プレリュードは見ただけで、ダイナミックでホットな走りのシーンが浮かんでくる。低く、幅広いボディ、ワイドなトレッド、どこから眺めても、迫力がある。
驚いたのは、ボンネットの低さだ。旧型と比較して、実に100mmも低いという。コクピットに入ると、さらに強く、低さを実感する。ドライビングポジションは、ほとんど本格派のスポーツカーに近い。ストレートアームスタイルが決まるタイプである。
視界はシネマスクリーンを見るようにワイドだ。当然、ドライビングはしやすい。視界が広いということは、ある面ではスピード感を高める要素になるが、ドライビングポジションの低さが、そのスピード感を相殺する。ゴキゲンな効果を生んでいるわけである。
ダッシュボード回り、メータークラスターのデザインも感じよくまとめられている。機能的なデザインだが、贅沢感も味わえるよう配慮されている。また、ホンダ車の美点で、相変わらず仕上げの質が高い。
エンジンは1.8リッターのSOHC・4気筒を搭載している。新開発のES型だ。開発テーマは、何よりも吸排気効率の向上という。その結果、吸気バルブ2個、排気バルブ1個の3バルブ方式を採用し、可変べンチュリー式のCVキャブレターを2連装した。圧縮比は9.4と高く、贅沢な排気システムの導入も、メーカーの主張を雄弁に物語る。
出力とトルクは125ps/5800rpm、15.6kgm/4000rpm。このパワースペックは1.8リッタークラスとしては非常にハイレベルだ。なお、AT車のほうは最高出力を5ps落として120psにし、一方で低速域のトルクを太らせるチューニングになっている。
走りは、まずMT車からチェック。実に活発に走る。0→400m加速は確実に16秒台をマークしそうだ、トップスピードは、メーター上では180km/hに届いた。これは、ノンターボで、ツインカムでもない1.8リッターエンジン車としては、素晴らしく立派なデータだ。
エンジンは6300rpmのレッドゾーンまでストレスなく回る。フィーリングも素晴らしい。エンジン音は、高回転域になるとやや高めになるが、音質が気分のいい部類だから、気にならない。
5速MTは操作性もいい。ギアリングもリーズナブルだがワインディングロードを飛ばすには、2速のギア比を少し高めたほうがベターだろう。
AT車は、いままでのセミオートマチックから4速のフルオートマチックに変わっている。このATはゴキゲンだ。なにしろ速い。0→400m加速にトライすれば、まず18秒を切ることは固い。トップスピードは、メーター上で175km/hをマークした。1.8リッターのAT車として文句のつけようがない。ワインディングロードの登りでも見事なスピードだった。MTかATかと迷うなら、ボクはATを勧めたい。
ニュー・プレリュードは、ハンドリング面でも期待を裏切らない。実にキビキビとシャープな身のこなしだ。ロールは小さく、ステアリング操作に対する挙動のレスポンもいい。とくにパワーステアリングの完成度は高い。
FF車だが、かなり高G域まで弱アンダーを保つ。最終的にフロントが流れ出すが、限界の挙動にはとくに危険や不安はない。これでリアの横剛性、ロール剛性があと少しアップすれば、乗り心地、接地性、限界特性などを一段と引き上げることができるだろう。
新型には13万円のopで、日本初の「4輪アンチロックブレーキ=ABS」が用意されている。メルセデス・ベンツやBMWといった高級車しか持てないハイテクメカだから、13万円は安い。これは自動的にロックを防止してブレーキングしながらのステアリング操作を可能にするシステムである。雪や凍結路では安全性の向上に直結する。
※CD誌/1983年2月号掲載
【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員
