竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】ダイハツ・ロッキー「誰もが使いやすいコンパクトSUV」(2025年11月号)

コンパクトSUVの市場で人気のあるダイハツ・ロッキー。登場時の1.0リッターターボの力強さに驚かされたが、マイナーチェンジでe-SMARTと呼ばれるシリーズ式ハイブリッドや1.2リッター・NAエンジンが加わり、さらに幅広い選択肢を得た。今回は1.2リッター・NAエンジンモデルに試乗し、その魅力を改めて確認してみた。

「こんなに元気で大丈夫!?」と、2019年にロッキーが登場し、1.0リッターターボモデルに試乗した際に、思わず開発の方にいってしまいました。いやはや、パワーモードのボタンを押してアクセルを目一杯踏み込んだら、思わず「ウワッ!」と声が出ちゃうくらいビックリするほど元気いっぱい。

 さらにビックリするほどラゲッジスペースが広くて、2段可変式デッキボードを備えていて荷物もいっぱい積めちゃう。アンダーラゲッジだけで80リッターも容量があって、頑張れば人ひとり入れそうなくらいの広さなんですよ(笑)。とにかくいろんな意味で衝撃を受けたのを覚えています。

 そしてこれ、当然のごとく大ヒット! 兄弟車種のトヨタ・ライズのほうが販売台数的には多かったかもしれませんが、そこは販売店数の差とかいろいろありますからね。でもライズが人気が出すぎたため、みんなと同じはイヤだし、これ作ってるのはダイハツだし、ロッキーがいいという声も多かったように思います。  

 さて、そんなロッキーですが、2021年11月にマイナーチェンジを受けまして、e-SMARTと呼ばれるハイブリッドモデルが追加されることになったんですよね。新開発の1.2リッターガソリンエンジンを発電だけに使い、走行はすべてモーターで行うという、わかりやすくいえば日産e-POWERと同じ仕組み。シリーズハイブリッド方式に分類されるタイプとなります。

 そしてもうひとつ、新開発の1.2リッターガソリンエンジンを搭載したモデルが登場しました。これが今回試乗したモデルとなります。さらに現在、4WDは1.0リッターターボ専用設定となっています。つまり3つのパワートレーンを持つモデルに進化したというわけなんですが、通常だんだんとバリエーションが絞られていく車種が多い中で、パワートレーンが2つも新たに登場するなんていうのは、なかなかないこと。これだけでもロッキーの人気っぷりがうかがえますよね。

 さて、その1.2リッターエンジンですが、いい意味でバランスよくまとめられたというのが正直な感想です。というのも、マイナーチェンジ前の2WDの1.0リッターターボエンジンモデルは、やはりちょっと元気がよすぎて、雨が降った街中なんかではちょっとギクシャクしちゃうケースもあったんです。4WDモデルだと4輪で駆動してますし、車重も重くなりますから、ちょうどイイ感じにまとまっていたんですけどね。この新しいエンジンは、ちょうどいい塩梅というわけなんですよ。

 意識したのは低回転域からのトルクと低燃費性能ということですが、確かに燃費(WLTCモード)はカタログスペックで20.7km/リッター。空力的に不利になるSUVというパッケージングで、20km/リッターを超えているのは見事だと思います。

 通常、NAエンジンなので高回転まで気持ちよ〜くという感じなのでしょうが、このエンジンはSUVという特性を踏まえ、低回転域のトルクの太さにこだわった感じがします。街中&高速道路といったシチュエーションならば、物足りなさを感じる心配はまったくないと思います。

 燃費の面では、とくに街中メインならば、28.0km/リッター(WLTCモード)を出しているハイブリッドモデルも、静粛性の高さも含めてオススメではあります。しかし、ロッキーの強みには低価格というのもありますので、このカテゴリーでの約30万円の差(プレミアムG HEVは246万700円)がどう判断されるか……といったところですね。あとは何といっても、モーターでの走行フィーリングが好きか嫌いか、ここが大きなポイントになると思います。

 とはいえ、シリーズ方式ですと、半分以上はエンジンが掛かっている状態になりますので、さほど違和感はないかもしれません。モーターのほうがダイレクト感はありますので、そういう意味ではラクさと楽しさもあると思います。

 滑りやすい路面での制御は、モーターのほうがガソリンモデルの約5倍ほど早いといわれていますが、ハイブリッドモデルには4WDの設定がないので、雪道となるとやはり4WDの走破性もほしくなるところだと思います。

 う~ん、これだけラインアップが揃っているとユーザーが迷うほど。選択肢が豊富という点は、ロッキーの特徴なのかもしれません。

 ですので、1.2リッター・NAエンジン2WDのモデルは、NAエンジンの持つ素直な気持ちよさ、ロッキーが元々持っている安定感の高さや、最小回転半径4.9m(試乗車のプレミアムGは17インチタイヤ装着車で5.0m)という取り回しのよさで、楽しい毎日を堪能してもらうのがいいのかもしれません。

 もちろんどのモデルでも、ヘッドクリアランスやカップルディスタンスを含めた室内の広さはもちろんのこと、665㎜という低すぎず高すぎずのヒップポイント高の効果で、毎日の乗り降りはラクラク。誰にでもピッタリはまるイマの時代のコンパクトSUVといっていいポジションにいるということが、ロッキーのヒットの真相なのではないでしょうか。

ダイハツ・ロッキー「ヒットの真相」

1)ラゲッジスペースは2段可変式デッキボードやアンダーラゲッジを備え、コンパクトSUVとは思えないほど広くて便利な空間を提供

2)1.0リッターターボ(4WD)、1.2リッター・NA(2WD)、ハイブリッド(2WD)の3タイプのパワートレーンを設定。ユーザーの好みに応える

3)小回り性能や広い室内に加え、ほどよいヒップポイント高で乗降性良好。誰にでも使いやすいコンパクトSUVとして支持を得る

SNSでフォローする