
メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー・エディション1/価格:2635万円。BEVのG580のシステム出力/トルクは587㎰/1164Nmと超弩級。バッテリー容量は116kW。一充電走行距離(WLTCモード)は530㎞に達する
Gクラスは本格ヨンクの代名詞である。ジープ同様軍用車が背景にあるクルマだ。1979年のリリース以降NATO(北大西洋条約機構)軍が採用している。そもそもがオーストリアのグラーツに本社を構えるシュタイア・プフ社製だけにそうなる。「そうなる」というのは、もともとここは軍用車両を手がけている会社だからだ。現在はマグナ・シュタイア社として自動車パーツを製造している。
Gクラスは、堅牢なラダーフレームをベースにリアのリジッドアクスルなどオーセンティックなクロカン要素を踏襲し続けている。オフロードでの走行はもちろん、トーイング(牽引)を想定しているからだ。また、3つのデフロック機構を持っているのもその証。電子式のロック機構をボタンで操作する。ちなみに操作手順は、まずはセンターデフロック、次にリアデフロック、それでも脱出できなければフロントデフロックとなる。この順番を間違えると故障を知らせるワーニングランプが点くのでお間違いなく。さらにフロントまでデフロックするとステアリングが効かなくなるのもお忘れなく。
この他ではジープ・ラングラー同様前後のアングルを稼ぐパッケージングをしている。背が高い分大きなクルマに思えるが、実は全長はイメージ以上に短い。現行型で4670〜4730㎜である。これ以上長くするとランプオーバーアングルが十分でなくなり、カメの子になってしまうのだろう。
それを考えるとこのクルマもまたラングラー同様3ドアをデフォルトとして設計されてきたことを感じる。現在はラインアップされていないが、先代ではショートボディが存在した。しかもそれをベースにしたカブリオレまであったのだからいまでは希少だ。
それはともかく、現行型は2018年に発表された3世代目となる。コードネームはW463を継承するが、実態はフルモデルチェンジだ。作りのよさを伝えるドアの閉まる音をそのままにボディパネルはすべて新設計された。人気となる武骨なデザインを継承しながら最新のテクノロジーを投入したのだ。ステアリング形式がボール&ナット式からラック&ピニオンに変更されたことからもわかるように、扱いやすさを最優先されている。そして近年、電動パワーソースや最新のインターフェイスの導入とともにコードネームをW465へ変更した。
そんな中での話題はエンジンを積まないBEVのG580 with EQテクノロジーの登場だろう。この大きくて重たい車体を電気だけで動かすのだから立派だ。もちろんモーターの出力を上げれば問題ないのだろうが、かなり自然な動き出しと重さを感じさせない加速を見せる。ラダーフレームでバッテリーを効率的に積むことを含め、開発陣はかなり手こずったに違いない。
さらにいえば、このクルマには“Gターン”なる秘密兵器がある。なんと内燃機関ではできない“その場回転”ができるのだ。左右のタイヤを逆回転させ実行する。クロカンにとってこれは最強の武器。行き止まりの林道で向きを変えられるのだから心強い。
そんなGクラスは個人的に所有したことがあり思い入れは強い。オフロードでの頼もしさは最上位レベル。“ゲレンデバーゲン(不整地走行車)”と呼ばれる根拠が目一杯備わっている。
