【スーパースポーツ最前線】デザインのマニフェストであり、次期メカニズムの先行開発車。世界29台限定「ランボルギーニ・フェノメノ」の輝き

ランボルギーニ・フェノメノはランボルギーニ・チェントロスティーレ(デザインセンター)の創設20周年を記念したメモリアルモデルであると同時に、近未来のランボルギーニ像を先取りした「公道を走るプロトタイプ」。生産台数は世界29台限定

ランボルギーニ・フェノメノはランボルギーニ・チェントロスティーレ(デザインセンター)の創設20周年を記念したメモリアルモデルであると同時に、近未来のランボルギーニ像を先取りした「公道を走るプロトタイプ」。生産台数は世界29台限定

システム出力は1080cvに達し、トップスピードは350km/h!

 ランボルギーニの新型フューオフ、「フェノメノ」。フェノメノはスペイン語やイタリア語で「常識はずれの凄いやつ」を意味する。生産台数は世界限定29台。「フューオフ」=few offとはごく少量生産モデルのことだ。

 凄いやつのワールドプレミアは「モントレーカーウィーク」の期間中、世界のクルマ好きとメディアの見守るなか催された。ところはペニンシュラ・グループの運営するゴルフリゾート「ザ・クエイル」。この週にあまた開催されるイベントの中でもトップクラスの人気を誇る「ザ・モーター・スポーツ・ギャザリング」(MSG)がその会場だ。

 MSGはクラシックなスポーツカーやレーシングカーがメインコンテンツのイベントである。最近では世界のラグジュアリーブランドがこぞって参加し、ワールドプレミアや北米プレミアを行うことが多い。その昔のジュネーブ・ショーを賑わせた高級ブランドがそのままやってきた感じである。

人物01

スケッチ

 ランボルギーニはここ数年、MSGで年に一度の発表を行っている。カウンタックLPI800-4(2020年)やランザドール(2023年)、テメラリオ(2024年)と話題のモデルを発表してきた。そして今年もまた注目の新型モデル、フェノメノをデビューさせた。

 2025年はチェントロスティーレ(デザインセンター)の創設20周年である。またCEOのステファン・ヴィンケルマンが初めてランボルギーニに着任したのもちょうど20年前だった(途中ブランクあり)。以来、ランボルギーニは年間の生産台数規模でほぼ7倍、会社の規模も倍にまで成長した。

 フューオフモデルというビジネスモデルを始めたのもヴィンケルマンCEOだった。07年にデビューしたレヴェントン(クーペ・スパイダー併せて35台)がその始まり。フェノメノ発表後に筆者との単独インタビューに応じたヴィンケルマンは、「デザインマニフェストを明確にし、顧客の満足度を高め、ブランドの価値を高めるためにフューオフビジネスは有効だと判断した」と当時を振り返っている。07年の年産台数といえば2400台程度だったから、1万台を超えてきた現在、フェノメノの29台がいかに貴重かがわかる。

エレガントにしてレーシー、フェノメノは未来を志向している

 アンベールされたフェノメノは鮮やかな新色ジアッロ・シリウスをまとっていた。空力に関係するパートをヴィジブルカーボンとしていたが、もちろんユニカラーにペイントすることもできる。ボディ同色にすればかなり印象も違うはず。とはいえ、黒い部分は積極的に残してもよさそうだ。なぜならチェントロスティーレの責任者であるミッティア・ボルケルト曰く、「1分の1デザインが完成したあと、いつものようにヘリテージ性を確認するためミウラと並べてみたら、フロントSダクト周りが似ていて驚いた」とのこと。意図したものではなかったとはいえ、Sダクトをヴィジブルカーボンで残せば、そんな逸話を語り継ぐこともできる。

フロント

リア

 ベースはレヴエルトだ。パワートレーンの構成はまったく同じである。ただし、リアミッドに積まれるV12エンジンはファインチューン(+10cv)されており、3基の電気モーターに変更はないもののセンターコンソール下に置かれたバッテリーが同サイズながら約2倍の性能を誇る新設計品となっている。結果、システム総合出力は1080cvに。電動走行可能な距離もおよそ2倍の20kmに向上した。

 レヴェントンやヴェネーノといった過去のフューオフモデルと決定的に異なる点は、フェノメノがブランドのデザインマニフェストであるのみならず、パフォーマンスに関連する新たなテクノロジーを(1つ2つではなく)ふんだんに盛り込んできたことにある。とくに6Dセンサーやパッシブダンパー、CCM-Rブレーキなどシャシー&サスペンション周りの考え方はレヴエルトとはまるで違う。このあたり、たった29台のために開発し採用したとは思えない。「フューオフには公道を走るプロトタイプの意味もある」とは、とあるエンジニアの弁。おそらく次世代のスーパーカー、レヴエルトの後継モデルもしくは近々デビューするテメラリオの派生モデルあたりに搭載されるだろう。

インパネ

シート

 「サーキットを中心とした超高速域でのパフォーマンスを極めた結果、実は日常域でのライドコンフォートも格段に向上した」と開発部門の責任者、ルーベン・モールは語る。加えて、「V12サウンドもさらによくなった」らしい。もちろんレギュレーションの枠内である。

 限定29台、すでに完売御礼。「近ごろは派手なエアロパーツをまとったハイパーカーやスーパースポーツに注目が集まりがちだ。けれどもわれわれはよりエレガントなスタイルのハイパーカーを作りたかった」とミッティア。サンタアガータは、フューオフのフェノメノを周囲の潮流に背を向けるように、そういう意味ではフェルッチョの時代にも共鳴するデザインコンセプトを掲げて、世に送り出した。

 確かに目を見張るようなエアロデバイスはない。けれども空力性能は格段に向上している。実物を見た感想をいえば、テメラリオの時と同じように、じわじわと観る者に迫ってくるデザインであった。

エンブレム

諸元

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