【スーパースポーツ試乗】最高出力1079ps、世界限定999台の駿馬「アストンマーティン・ヴァルハラ」をシルバーストーン専用トラックで全開にした!

アストンマーティン・ヴァルハラは、ヴァルハラはアストンマーティン唯一の量産ミッドシップ車であり、PHEVスポーツ。生産台数は世界限定999台。3基のモーターと4リッター・V8ツインターボのシステム出力/トルクは1079ps/1100Nmと圧倒的

アストンマーティン・ヴァルハラは、ヴァルハラはアストンマーティン唯一の量産ミッドシップ車であり、PHEVスポーツ。生産台数は世界限定999台。3基のモーターと4リッター・V8ツインターボのシステム出力/トルクは1079ps/1100Nmと圧倒的

トップスピード350km/h! レーシーにして洗練。それが英国流儀

 それは、フロント×2、リア×1の電気モーター+高出力のV8ツインターボエンジンという構成のプラグインハイブリッドシステムを積んだミッドシップPHEVスーパーカー。システム総合出力は1000psオーバー。そう聞くと多くのクルマ好きはイタリアンブランドが送り出した最新レシピを思い出すのではないか。そう、フェラーリSF90XXストラダーレだ。

 しかし、今回の相手は赤の似合うイタリアンではない。グリーンが映えるブリティッシュ。アストンマーティンの新型ミッドシップモデル、ヴァルハラである。

 英国の老舗はどうやらイタリアンビジネスに真っ向勝負をかけているようだ。鮮やかなブリティッシュレーシンググリーンをまとったフォーミュラ1を頂点に据え、GT3マシン、レーストラック専用モデル、ハイパーカー、V12およびV8のGTカーとスポーツカー、そしてスーパーSUVが揃う。レースマシン、そしてロードカーとも、両社が生み出す「クルマの品揃え」はほとんど似通っている。ヴァルハラは、シリーズモデルに欠けていたミッドシップスーパーカーという最後のピースである。

ドア開け

フロント

 ヴァルハラは2019年に登場したAM-RB003がプロジェクトのスタートポイントだ。当時は兄貴分のヴァルキリーのイメージが色濃く残るデザインだった。2021年にほぼ現在のスタイルへと改まり、車名もヴァルハラに変更。もちろん北欧神話に由来する名称だ。

 2024年末に正式デビューを飾り、生産台数は世界限定999台。このスーパーカーの語るべきポイントは、パワートレーンとデザインだ。PHEVとしてのシステム構成は前述のとおり、最新の高性能ミッドシップスーパーカーの定石というべき手法である(2代目ホンダNSXがいかに未来派だったかがわかる)。1079psとライバルをわずかに上回るシステム出力もさることながら、注目しておきたいのはV8エンジンだ。

 もちろんメルセデスAMG製のユニットである。けれどもこれまでのアストンマーティンに搭載されてきたV8=M177型とは「まったく異なる」。その名もM178LS2型。そうAMGファンならご承知のとおり、GTブラックシリーズ用に開発されたフラットプレーンドライサンプのスペシャルエンジンだ。アストンマーティンの開発陣によってビスポークされたM178LS2型は何と単体で828psを発揮。これに新設計の8DCTを組み合わせて0→100km/h加速は2.5秒でこなす。

リア走り

インパネ

 次にスタイル。個人的には現在、新車で購入できるミッドシップスーパーカーの中では最も美しい部類に入ると思う。アストンマーティンとしては、少量生産だったハイパーカーのヴァルキリーを除くと、初めての「ほぼ量産」ミッドシップカーである。それゆえ誰もがひと目でアストンだと認識できるスタイルにしたかったのだろう。

 誰がどこからどう見ても「ザ・アストンマーティン」スタイルである。特徴的なグリルに始まり、グラマラスながら艶やかなライン構成、優雅なディテール処理など、驚くほどエレガントにまとまった。

思いのままに走り、圧倒的に速い! ヴァルハラは操縦フィールを楽しむスーパーモデル

 もちろん、すべてのデザインに意味がある。空力性能を徹底的に鍛え上げ、必要な機能をすべて盛り込んだ。エレガントであると同時にドライバーを誘い込む力もある。物々しいヴァルキリーに比べて、はっきりとフレンドリー。これなら「毎日乗りたい」と思えるはずだ。

 生産直前のプロトタイプに試乗することができた。乗りやすさという点では見た目(試乗車は物々しい偽装ラッピング車だが)の印象どおり、否、想像した以上のフレンドリーさだった。場所はシルバーストーンサーキットのインフィールドにあるアストンマーティン専用のショートテストトラック「ストウ」。1周1.7kmちょっとだが、十分な直線と多様なコーナーで構成された、なかなか面白いトラックであることを、コース習熟用に供されたヴァンテージで理解する。

コーナリング

 V8・FRのヴァンテージで思う存分楽しんだ後、いよいよヴァルハラ・生産プロトタイプに乗り込んだ。着座ポイントはあくまで低い。さっきまで座っていたヴァンテージのポジションとは違いすぎる。

 ピットロードを出る頃にはもうすでに乗りやすいと感じていた。荒れた路面でもしなやかにいなす。ストレスなくきれいに動く前輪と、右足の踏み込みに忠実なパワートレーンのおかげで、早くもマシンとの一体感が芽生えていた。

 1周目は様子見のつもりだった。だが裏ストレートに出た瞬間、右足を最奥まで踏み込んだ。1000psオーバーの誘惑に負けたのだ。

タイヤ

マフラー

 速い。お腹にドーンと衝撃のある速さ。オートマチックモードでもキレよく的確なシフトアップを見せる。ブレーキ性能も凄まじい。回生による違和感はなく、思いどおりに速度を落とす。強弱のコントロールも思いのまま。そしてコーナーへ。フロント2モーターのおかげで一段高いギアを使い、驚くほど速くコーナーをクリアする。電気モーターの存在をほとんど感じさせず、ステアリングの操作感が極めてダイレクトであることにも感心した。

 超ハイパワーなミッドシップスポーツカーの操縦フィールを心から楽しむ、しかも驚くべき速さで、という点がヴァルハラの最大の価値。英国の老舗は、ドライバーの心理を知り尽くしている。

エンブレム

諸元

フォトギャラリー

SNSでフォローする