Hondaプレリュード/価格:617万9000円。スタイリングは「高揚と緊張感」を追求。スムーズなルーフラインが印象的。走りはリアルスポーツ感覚。エンジンの鼓動が楽しめるS+シフトを初採用。シャシーはシビック・タイプR用をベースに専用調律。スペシャリティクーペらしく快適性にも配慮した
2025年9月、伝説のスペシャリティカー、プレリュードが完全復活した。プレリュードは1970年代後半から2000年代初頭に絶大な人気を誇ったクーペモデル。新型はほぼ25年ぶりに再登場する6代目モデルとなる。
グランドコンセプトは「UNLIMITED GLIDE」。「どこまでも行きたくなる気持ちよさ×非日常のときめき」を提供価値に掲げ、プレリュードとともにすごす特別な時間、操る喜び、そしてグライダーで大空を滑空するような高揚感にこだわったという。
開発責任者の山上智之氏は「新型は移動の楽しさを追求し、持続可能なFUNを提供するクルマです。大切にしたのは[ときめき]。新たなハイブリッドスポーツカーから生まれる特別な時間を意識しました。自由なイメージのあるグライダーを念頭に、最新の技術と思想を積極的に投入しています。当初は[プレリュードの復活]という意識は薄かったのですが、開発が進む中で、このクルマには、プレリュード(=前奏曲)というネーミングがふさわしい、ということになりました」と、車名復活のエピソードを語り、続けて「新型はスポーツカーであり、スペシャリティカーでありデートカー。往年のファンには数十年前の「あの頃の自分自身」とのデートを楽しんでもらいたいですね」と説明してくれた。
スタイリングは、低くシャープなノーズが印象的なクーペフォルム。グライダーをイメージしたプロポーション、三次元的にクロスするダイナミックなサーフェス、そして走りを予感させるスタンスを組み合わせた。エアロダイナミクス性能も高そうだ。
造形を統括したクリエイティブダイレクターの内野英明氏は、「プレリュードでしか得られない[高揚と緊張感]をマニアックに追求しました。現在はデジタル化が進行し、スマホで日常生活をきらめかせることが可能ですが、開発チームは、いま一度フィジカルに立ち返り[二人だけの体験]を追求しました。人と人の思いがつながり日常のきらめきが増す感覚、所有の先にある、誰かと分かち合う喜びを追求したのです。その懐の深さが現代のプレリュードです」と語る。内野氏はかつて4代目を所有、奥様との出会いのキューピット役をプレリュードが務めた。新型の開発に当たり、自ら3代目を購入。チームでプレリュードの価値とスペシャリティカー像を改めて共有したという。
エクステリアを担当した大沼紀人氏は「従来のクーペというカテゴリーに収まらない自由発想でチャレンジしました。前方は突き上げるようなモチーフを使いグライダーが離陸する瞬間の軽やかさを表現。後方は地に足をつけて踏ん張る安定感と力強さを意識しています。またドライバーとクルマの一体感を高めるため、タイヤの位置を把握しやすいようフードラインを工夫しました」と教えてくれた。
ライトグラフィックは前後ともワイドな一文字形状で、ルーフラインはスムーズ。ボディタイプはリアに大型ゲートを配したプレリュード初の3ドア。足元には19インチの大径タイヤとノイズリデューション形状アルミを組み合わせている。リアセンターに配置された「Prelude」のロゴは、あのアイルトン・セナ選手がCMでドライビングを披露した4代目モデルのオマージュだ。なお、ボディサイズは4520×1880×1355mm。シビック・タイプR比で75mm短く、10mmタイト、50mm低い。ホイールベースは2605mm。クーペとしては長めだが、それでもシビック比で130mm短くなっている。
室内は「GLIDING COCKPIT」がキーワード。ホワイトと深いブルーのカラーコーディネートが印象的だ(ブラック内装も設定)。インパネは最新Honda車共通の機能的なレイアウト。上質なレザー調パッドやバイカラーのステッチがクーペらしい特別感を表現する。
インテリアデザイナーの東森裕生氏は「ダイナミックな走りに対し、コーナリング時など踏ん張りどころでピタッと収まるフィット感を追求しました。ドライバーだけでなく同乗者の快適性も重視しました」と説明。前席は、それぞれが専用仕様の特別設計。運転席はサイドサポートにワイヤーを配し、クッションはやや固め。一方、助手席はワイヤーレスの快適仕様。座面は乗降性を重視した作りである。
パッケージングは2+2構成。後席はいざとなれば大人の乗り込みも可能だ。シートバックを倒すと、ゴルフバッグが2セット積める。
メカニズムは完成度を高めた2リッター・e:HEVと新機構S+シフトの組み合わせ。足回りはシビック・タイプRをベースにした専用チューンだ。すでにプロトタイプに試乗したF1パイロットの角田裕毅選手は「素直に反応するクルマ、自分の思うように走らせている実感がある。よく曲がるしブレーキが素晴らしい、楽しい!」と絶賛。
新型プレリュードは、スペシャリティクーペならではの贅沢な味わいと、ホンダらしい走りのこだわりを凝縮した意欲作である。新たなムーブメントを生むに違いない。