手ごろなサイズと価格と性能のライトウエイトFRスポーツというのは、80年代や90年代には身近だったが、2000年代に入ってめっきり少なくなってしまった。そこに現れた(2012年)初代86とBRZは、4人が乗れて実用性もまずまずの2ドアクーペである。
2台は見た目も走りのキャラクターも作り分けられていた。だが、お互いが理想を目指した結果、時間の経過とともに歩み寄っていったのも興味深いが、2021年にモデルチェンジした現行モデルで再び作り分けられ、同じ工場で生産される兄弟車とは思えないほど個性が鮮明に分かれていた。
どちらも走って楽しいことに変わりはないが、楽しさの質が違って、“FR”とはなんぞや?への考え方がだいぶ異なる。
GR86は、FRとはドリフトしてナンボというわかりやすい味付けだ。アクセル操作による荷重移動でオンでもオフでもキッカケがつくりやすく、簡単にテールスライドできて、それを維持しやすい。それはFRの本来的な特性を学ぶことにつながる。
BRZはドライビング操作に対して忠実に応答し、オンザレール感覚のハンドリングが味わえる、FRのスポーツカーとして、より質の高い走りを追求したことがうかがえる。
2台とも毎年のように改良を繰り返しているところも大きな特徴。開発陣がつねに問題意識を持って進化の手を止めるずにチャレンジしている点は、モータースポーツに通じる。運転すると、いろいろと学びが得られるクルマであることがよくわかる。
トヨタGR86・RZ/価格:6AT 351万8000円/6AT 361万6000円
全長×全幅×全高4265×1775×1310(ルーフ部は1280)㎜、ホイールベース2575㎜
車重1270㎏
2387cc・水平対向4DOHC16V(235㎰/250Nm)
ブレーキは前後ベンチレーテッドディスク
駆動方式はFR
タイヤサイズ215/40R18+アルミ