マツダがロードスターというクルマを生み出して以来、過去35年もの間欠かさず続けてきたメディア対抗ロードスター耐久レース(以下、メデ耐)。筆者にとってこのレースは、憧れの舞台だった。
少年時代に読んだB5版の自動車雑誌の白黒ページで掲載されていた、ロールケージが組み込まれたNAロードスターによるメデ耐のレポートを見て、ものすごくワクワクした。詳しい内容はもちろん、どの雑誌で読んだのかさえまったく覚えていないが、「なんて楽しそうなんだ」という印象は強く残っていた。

予選は昨年に続き筆者が担当。目指すはシングルグリッドだった。徐々に乾いていく路面に合わせてピットで空気圧調整を試みるも、緊張の余りTRACKモードを入れ忘れ、タイムアップならず11番手。さらにピットロード出口での速度違反で1秒加算され2グリッド降格と大失態であった……
時は過ぎ、2022年の第33回大会に小誌としては28年ぶりに復帰戦として筆者も初参戦し、7位入賞。翌2023年は途中トラブルに見舞われ最後尾フィニッシュ。
そして昨年は、最終ラップで3位表彰台目前でガス欠リタイアと、過去3年で振れ幅の大きい結果を残してきた。一貫して目標としていたのは「表彰台」だったが、どうにもそこに届かないもどかしさがあった。
第36回目を迎えるメデ耐は、今年からマツダのファン感謝イベント『MAZDA FAN FESTA 2025 at FUJI SPEEDWAY』に組み込まれることになった。
これは、レースの舞台が国際サーキットである富士スピードウェイになったことを意味する。前後するが、そもそもこのイベントの趣旨は、自動車に関する情報発信を行うメディアの編集者や、そこに寄稿するジャーナリストらが集まり、「耐久レースを通じて、走る歓びを体感し、その楽しさをメディアを通じて発信することで自動車文化を育む」というもの。
端的に言い換えれば、「みんなで一緒に本気で遊んで盛り上げようぜ!」という、なんとも粋な取り組みである。
今年のドライバーは編集部からは筆者、執筆陣からは岡本幸一郎氏、大谷達也氏、加藤英昭氏と、ここまでは昨年までと同じ、メデ耐の趣旨に沿ったメンバーである。ただ、最後の一人には若者を組み入れたかった。そして、縁あってマツダチャレンジプログラムの一期生で、現役パーティーレーサーでもある25歳の三宅陽大選手を招聘できることになった。表彰台を目指すにあたり、非常に頼もしい「助っ人」だ。
過去35年間は4時間の耐久レースで、途中に給油を行うレギュレーションだった。今年からは3時間に短縮され、かつ給油なしで走り切るという、これまでよりも厳しい燃費レースとなった。昨年に最終ラップでガス欠リタイアを喫しているわがチームは、机上での燃費計算は当然ながら、自前のパーティーレース仕様のロードスターNR-Aでの事前テストを行うなど、入念な準備を行い当日を迎えたのだった。
当日の天気予報は曇り時々雨。予選は少しばかりの雨と濡れた路面での走行となった。結果は昨年と同じ11番手、と思いきや、ピットレーン速度違反によって1秒加算となり、13番グリッドに降格。決勝レースはスタート直前に降り出した雨によって路面はヘビーウエット。こうなると事前の燃費シミュレーションは大きく崩れる。しかし、これは結果的にチャンスだった。事前準備のかいもあって、一時トップに躍り出ることもできた。しかし他チームも実力者揃い。
そう簡単に問屋は卸してくれない。そして迎えた最終ラップ、昨年と同じ表彰台圏内の3位走行中、後ろから迫りくるENGINEチームに抜かれてしまった。つまり、またしても表彰台を逃したのだ。それでも無事チェッカーを受け、4位入賞が確定した。 仲間で集い、本気で遊ぶという幸せ 目標の表彰台を逃したことは正直に口惜しい。
ただ、仕事仲間や友人・家族も集まって、大人同士が真剣にレースに取り組む「本気の遊び」。なんとこれが楽しいことか。その多くは「クルマ好き」だが、そうでない人も一緒に集まって盛り上がれるのが、こういった耐久レースの醍醐味である。そう、子どものころに感じたあの印象は、いままさに実感し、証明されたのである。
