BYDがジャパンモビリティショー2025の乗用車ブースで軽スーパーハイトワゴンEVの「ラッコ」プロトタイプ、プラグインハイブリッドモデルの「シーライオン6 DM-i」、BYDのハイエンドブランド「YANGWANG」のハイパースポーツEV「U9」を、商用車ブースで日本規格に合わせた小型EVトラックの「T35」、小型EVバスの「J6」をベースに移動可能なオフィスとして新規開発した「J6リビングカー」を公開。ラッコは2026年夏の日本導入を予告し、シーライオン6 DM-iは本年12月1日の正式発表をアナウンスするとともに先行予約の受付を開始
BYD Japan Groupは、ジャパンモビリティショー2025において乗用車と商用車に分けてブースを展開。乗用車ブースでは日本独自の軽規格に準拠したBYD初の海外専用設計モデルである軽EVプロトタイプ「ラッコ(RACCO)」や、高効率プラグインハイブリッドシステム「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」を搭載したスーパーハイブリッドモデルの「シーライオン6 DM-i(SEALION 6 DM-i)」、BYDのハイエンドブランド「YANGWANG」のハイパースポーツEV「U9」などを披露した。
最大の注目は、BYD独自のEV技術を軽規格のボディに収めた「ラッコ」の出展だ。BYDは地球環境を守る意気込みを示す手法として海洋生物のネーミングを車名に冠しているが、新しい軽EVでは海とともに生き、知恵(貝を割る小さな石)で毎日を生き抜く“賢さ”を持ち、また“愛らしさ”“親しみやすさ”の象徴でもあるイタチ科最大種のラッコ(海獺)の名を採用。また、ラッコは国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定されており、EVによって地球環境を守るBYDの想いを、このラッコのネーミングに込めている。
エクステリアについては、日本の軽自動車で最も人気の高いスーパーハイトワゴンのスタイルを基調に、左右リアスライドドアを採用して利便性をアップ。ディテールにも工夫を凝らし、EVらしいグリルレスの造形にC字型のLEDヘッドランプを配したフロントマスク、C字型のLEDコンビネーションとライトバーを組み合わせるとともに光るBYDロゴを配備した水平基調のリアライティング、新デザインのRACCOエンブレムなど採用する。ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1800mmに設定した。
内包するインテリアは、上部に水平基調のシンプルなダッシュボード、下部に物理的なスイッチと収納スペースを配備した専用設計のインパネや、フラットボトム型のステアリングホイール、上方に垂直に伸びるシフトセレクター、多様な情報を見やすく表示するディスプレイメーター、そして軽自動車では最大級の大きさを確保したセンターディスプレイなどが目を引く。ハンドル位置はもちろん右だ。シートは前後ともにベンチタイプでアレンジし、左右独立でのスライドおよびリクライニングを可能としている。
肝心のパワートレインは、BYD独自技術の永久磁石同期モーターおよびバッテリーマネジメントシステムに、耐久性およびコストパフォーマンスに優れたLFP(リン酸鉄)リチウムイオンバッテリーを組み合わせて前輪を駆動。バッテリー容量はスタンダードとロングレンジの2タイプの設定を予定する。なお、ラッコの開発には日産自動車で軽EVの「サクラ」の開発を手がけた田川博英氏が参画。また、マーケティングにも日本人のスタッフが多数参入しており、競争力のある車両価格や販売戦略を検討しているという。ラッコの日本への導入は、2026年夏の予定だ。




▲BYD独自のEV技術を軽規格のボディに収めた「ラッコ」。日本の軽自動車で最も人気の高いスーパーハイトワゴンのスタイルを基調に、左右リアスライドドアを採用して利便性を高める。日本への導入は2026年夏を予告
ラッコの横には、“スーパーハイブリッド(SUPER HYBRID)”モデルを謳うプラグインハイブリッドSUVの「シーライオン6 DM-i」が鎮座する。パワートレインには、BYDが独自開発したプラグインハイブリッドシステム「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」を搭載。システムはコンパクトな1.5リットルガソリンエンジン(最高出力72kW/最大トルク122Nm)、高効率モーター(最高出力145kW/最大トルク300Nm)、リチウムイオン電池で構成し、EV航続距離は前輪駆動モデルで100kmを実現する。充電はAC普通充電とDC急速充電に対応。性能面では前輪駆動モデルで0→100km/h加速8.5秒を実現した。エクステリアはクロスオーバータイプのSUVで仕立て、ボディサイズは全長4775×全幅1890×全高1670mm/ホイールベース2765mmに設定。車種展開は前輪駆動モデルのほか、四輪駆動のAWDモデルをラインアップする。
なお、シーライオン6 DM-iは本年12月1日に日本での正式発表を予定。発表に先駆けて、11月1日より先行予約の受付を開始している。


乗用車のブースではほかにも、BYDの高級車ブランドであるYANGWANG(仰望=ヤンワン)のハイパースポーツEV「U9」が日本初公開を果たす。新世代e4プラットフォームとDiSus-X制御技術を採用し、ハイパースポーツ然としたスタイリングを纏うU9は、パワートレインに最高出力1306ps/最大トルク1680Nmを発生する前後モーターに、総電力量80kWhのブレードバッテリーを搭載。0→100km/h加速は2.36秒の俊足を誇る。なお、U9の中国市場での車両価格は168万元(約3500万円)で、日本への導入は予定していないが、ショー会場のスタッフは「来場者の反応を見たい」と語っていた。
一方で商用車ブースでは、車格や車両総重量のすべてを日本規格に合わせた小型EVトラックの「T35」を世界初公開するとともに、小型EVバスの「J6」をベースに移動可能なオフィスとして新規開発した「J6リビングカー」を日本初公開する。
まずT35は、日本の普通免許で運転可能な新世代のEVトラックとして開発。車両総重量・全長・全幅・全高のすべてを日本規格に合わせた専用設計とし、パワートレインにはBYD独自技術のブレードバッテリーを採用して、安定した航続距離を実現する。EVシステムは最高出力150kW/最大トルク340Nmを発生する永久磁石同期モーターをリアアクスルに配置し、総電力量62kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを組み合わせて後輪を駆動。最高速度は120kmとし、一充電走行距離はWLTC相当で250kmを確保する。また、充電はCHAdeMO方式の71kW急速充電で0~100%を約65分でこなし、V2H/V2Lの給電にも対応させた。
ショーではアルミバン仕様のT35を展示していたが、ラインアップとしては平ボディのT35も選択可能。後輪には185/R15LTのダブルタイヤを配して、フラットかつ低床の荷台を確保する。ボディサイズはアルミバンが全長4990×全幅1885×全高2830mm/ホイールベース2525mm、平ボディが全長4690×全幅1695×全高1990mm/ホイールベース2525mmに設定し、乗車定員はいずれも3名とした。なお、T35の日本での発売は2026年春を予定している。


次にJ6リビングカーは、使いやすいサイズと価格を超える性能および装備で高い人気を集めている小型EVバスの「J6」をベースに、移動可能なオフィスとして新規に開発したコンセプトモデル。BYDはJ6の新たな可能性として移動オフィスとしての利用や災害時の一時避難場所としての活用を想定しており、今回のショーでは“mobile office vehicle”と称して、移動オフィス仕様のJ6リビングカーを披露する。内装のアレンジにもこだわり、ホワイトやベージュのカラーリングを基調に、温かみのあるウッディーなアレンジを随所に施していた。
