鉛筆画の手法で、オートバイを中心に作品を発表しているイラストレーター、大塚克さん。今回のテーマはF1マシンです。鉛筆画ならではの細部の描き込み、彩色画とは異なる表現方法などについてもうかがいました。作品を鑑賞すると、ルーペで拡大して見たくなります。
作品1は、『2005年 マクラーレンMP4-20』です。ドライバーは、キミ・ライコネン選手とファン・パブロ・モントーヤ選手。ボクが注目するF1カーデザイナーの鬼才、エイドリアン・ニューウェイは、テクニカル・ディレクターとして携わっていました。このマシンはシーズン19戦で優勝10回という素晴らしい成績を残しました。
作品2は、『1990年 レイトンハウス CG901』です。ドライバーは、マウリシモ・グージェルミン選手でした。このマシンは、非力なエンジンでも空力を生かした設計・デザインで活躍してきたエイドリアン・ニューウェイが若き日に手がけました。パフォーマンスはいまひとつでしたが、空力を優先した設計のマシンは美しく、特徴あるマイアミブルーの車体を鉛筆では表現できないのが残念です。
作品制作に欠かせない鉛筆は、紙との相性が大切で、湿度が大きく左右します。実のところ、良質な画材よりエアコンの性能が重要です。
作品を描くポイントとして、毎回力を入れるのは地面です。マシンや人物などを描き込むのは当たり前ですが、一見ベタに見える地面や空などは、適当に塗ったりすると手抜き感満載の恥ずかしい仕上がりになってしまいます。今回は、コンクリートの地面をコツコツ描くことに集中しました。
また、作品1のマクラーレンのイラストは、背景に金網があります。絵の具を使用する場合は、最後に細線を描き加えることができますが、鉛筆画の場合は白地を塗り残していくしかないので、正直そうとう面倒です(笑)。
作品2点は、サイズはA2、制作期間は約10日間でした。
雑誌のイラストで描く題材は、サーキットで活躍した名車、ドライバーやライダーたちばかりですが、ボクは運転するほうが好きなので、うんちくは苦手です。
以前、地元の市が運営する展覧会に出展した際、ローカルテレビが取材に来てくれました。担当アナウンサーがものすごく勉強されてきて、質問内容が初めて聞かれることばかりで焦りました。あそこまで崖っぷちに追い込まれたのは初めてかもしれません。
ボクがもともと好きな機種はオートバイですが、F1に関するマシンで好きなのは、若いときに憧れていたフェラーリ312T3。1978年に大活躍したマシンです。
そのころ、ボクは銀座のデザイン事務所で働いていました。近くの銀座伊東屋でタミヤのラジコンを販売していて、初任給で買ったのがフェラーリ312T3とバギーチャンプでした。
当時購入した2台は、すいぶん前に大破して廃棄しましたが、最近、タミヤから復刻版が発売され、バギーチャンプを手に入れました。同じメカニズムで当時を再現していますが、サスペンションのオイルがまったく漏れないなど、進化を感じました。
1978年頃から80年代は、ボクの青年時代で、その当時に憧れたものがいまでも一番好きだと思います。
90年代に入るとデジタル化が進み、メーターもアナログから液晶に変わりましたし、職人技の溶接や砂型鋳造で造られた有機的なラインのエンジンもなくなっていきました。工場の製造ラインで大量生産しやすいデザインに変わっていく時代の流れに、一気に冷めていった記憶があります。
ボクが最も好きなカーデザインは、117クーペです。デザイナーはイタリア人のジョルジェット・ジウジアーロで、一番好きなデザイナーです。ちなみに、ボクの仕事部屋の椅子は、オフィス家具メーカー、オカムラ製ジウジアーロ・デザインの“バロン”で、自慢です。
最近のクルマに関して気になるのは、ヨーロッパ車のボディカラーの美しさ。同じようなオレンジでも欧州車はゴールドに見え、日本車は茶色に見えるのが不思議です。そして、ヒューマンエラーを防止する最先端の自動運転技術に大いに期待しています。
インタビュアー/山内トモコ
おおつかまさる/1960年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。外資系広告代理店を経て、1995年からイラストレーターとして独立。2009年からバイク雑誌やモータースポーツ雑誌 の表紙イラストを担当。 AAF オートモビル・アート連盟会員。千葉県市川市在住。ホームページ: nanapi.net
