「たすけてブーブー」プロジェクトチームは、子どもが車内に置き去りにされる事故を防止するために発足した。車内に取り残された子どもにクラクションを鳴らすことで救助を求めるように教え、万一の場合には子どもたちが救助のアクションを起こせることを目指している。
クラクションを鳴らす行動をわかりやすく教えるために、プロジェクトチームはポプラ社とともに絵本『ぶたすけのラッパ』を刊行した。絵本は作・やまざきひろし、絵・柴田ケイコである。
「森のほいくえん」に通う「ぶたすけ」は、頭のラッパから元気に「ブー!」と鳴らすぶたの男の子。給食中もお昼寝中も「ブー!」と鳴らすようなキャラクター。ある日、ぶたすけは友人と隠れんぼをしているときに、ドアが開いたままの園バスを発見。「しめしめ」とばかりにぶたすけは園バスに隠れると、ドアが開かなくなって……。そんなピンチをぶたすけはどう乗り切るのか。
車内に置き去りにされた子どもが熱中症で命を失い悲惨な事故は毎年のように起きている。車内に残された子どもが、「クルマの中にいる」ことをクラクションで知らせて悲劇を防ぐ。そうした思いが込められた絵本である。
実は幼稚園バスなどに対しては、2023年4月から置き去り防止の安全装置設置が義務付けられている。安全装置には車内に子どもが残っていないか検知して知らせるタイプ(自動検知式)と、人による車内確認が実施されなかった場合には車内に警報を発するとともに、車外にも警報を通知するタイプ(降車時確認式)がある。
ここで注目したい点は安全装置に「マイナス30度〜65度の耐温性」が求められている(国土交通省のガイドライン)点だ。この点から、車内は50度以上の高温にさらされる可能性が読み取れる。
安全装置の義務化がクローズアップされがちだが、これは「子どもの所在確認」の義務付けとセットになっている。
子ども家庭庁がまとめた『こどものバス送迎・安全徹底マニュアル』には「運転手は、バスを離れる前に、車内にこどもが残っていないことを、椅子の下まで見落としがないか見て、確認した」の項目がチェックシートに記載されている。
乗車した子どもの人数確認や、欠席者の確認などを運転手と同乗職員が確認するようガイドで示したのだ。子どもの車内置き去りは、人による確認作業が大切で、万一のヒューマンエラーが起きた場合に安全装置がカバーするという考え方だ。
この方式は、ファミリカーでも実践したほうがいい。たとえばミニバンなどで子どもの友人を乗せた場合など、乗降の確認はドライバーと保護者で確実に行う。それでも車内に取り残された場合には「たすけてブーブー」で周囲に知らせるのである。
こども家庭庁が2023年12月に発表した『送迎用バスに対する安全装置の装備状況の調査(第2回)結果について』によると、2023年10月時点での安全装置の装備完了台数は5万4345台中3万9379台で、72.5%が設置済み。2024年3月末までには99.9%が装備予定だと回答している。
『ぶたすけのラッパ』(ポプラ社刊)
作・やまざきひろし/絵・柴田ケイコ
価格1300円+税
B5変形判/32ページ