BEVの駆動用バッテリーのリサイクル・リユース最新ニュース

BEVの駆動用バッテリーのリサイクル・リユース最新ニュースを解説

日産自動車/ケンウッドJVC/フォーアールエナジーが開発したリーフのバッテリーを使ったポータブル電源。17万500円

 BEV(バッテリー電気自動車)の大量普及を見越し、車載電池のリユース/リサイクル事業が各国で立ち上がり始めた。

 車載電池パックを降ろし、その中から一定以上の残量がある電池だけを集めて他の用途に使うのがリユース、残量がほとんどない電池から資源を回収し、再び電池材料として使用するのがリサイクル(正しくはリサイクリング)である。

 車載電池の場合、現在はほとんどがLIB(リチウムイオン2次電池)であり、そこにはリチウムやコバルトなどが使われている。いずれはこの資源を効率よく安価に再利用できる体制を築く必要がある。

 日産はこのほどJVCケンウッド、フォアールエナジーと共同でBEV、リーフの使用済みLIBを使った再生品としてポータブルバッテリーを発売した。容量は633Whで、100W電球を約6.3時間点灯可能な電力を蓄える。価格は税込み17万500円と高価だが充放電回数は約2000回である。この容量と小売価格を1kWhに換算すると約26万8000円となる。

VWが研究を進めるバッテリーのリサイクルはバッテリーを粉砕して破片ごとに素材に分類するというスタイル。粉砕した破片は電解液を乾燥させたうえで素材別に分類する

 日産はBEVの市販前からLIBの再利用を考えていた。候補に挙がっていたのは工場内で使うAGV(電動式の自動搬送車)や工場またはオフィスの定置電源などで、社内だけでなく販売先も模索していた。2年前にはJR東日本の踏切での使用実験が始まっている。今回、初めて市販品として再生LIBが使われた。

 一方、使用済みLIBについてはエネルギー関連業種で試験的な設備稼働が始まっている。ただし、まだ世の中に出回っているBEV台数が少ないため、本格的な事業化の事例となると、携帯電話やコンピュータで使われているLIBから資源を取り出す小規模事業が多い。本格的に車載LIBのリサイクリングが始まるのは、2030年代である。

 廃棄LIBから資源を取り出す方法はいくつかあるが、VW(フォルクスワーゲン)はLIBパックから取り出したモジュールをそのまま大型のシュレッダーに入れて粉砕し、その破片を素材ごとに分類する方法を実験している。粉砕後に電解液を熱で乾燥させ、比重の違いや磁力などで素材を分類し、最終的には素材の精製に薬品を使う。この方法が一般的になるともいわれている。

テスラが搭載している円筒形バッテリーの間にはこのような冷却水路が使われている。これもバッテリーと一緒に冷凍粉砕して再生処理される

 テスラはモジュール全体をごく低温まで冷凍し、電解液を不活性の状態にしたあとで粉砕し、あとは「ふるい」や磁力などを使って素材ごとに分類する方法を一部で展開し始めた。VWは熱で乾燥させ、テスラは凍らせる。この違いが興味深い。

 LIBを粉砕する理由は、分解の手間を省いて再資源化のコストを抑える点にある。中国勢がLIBを大量生産し厳しい価格競争になっているから、リサイクルコストの低減は必須だ。高コストでは再資源化した材料が売れない。

 こうした事態にならないようEU(欧州連合)は「車載電池にはリサイクル材を一定比率で使う」という規制の導入を予定している。ただし、すでにその効果を疑問視する声も挙がっている。さらに、LIBではなくNIB(ナトリウムイオン電池)やフッ化物電池といった次世代電池への対応はまったく未知数というのが現状だ。

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