完成は2030年代ごろから2040年代の予定。東京都心のKK線はゆっくり変わっていく

東京高速道路(KK線)は、民間が運営する公共施設。ルーフパークをテーマにゆっくり完成を目指す

 11月21日、東京・銀座で「Roof Park Forum 2025」が開催された。これは現在運用を中止している東京高速道路(KK線)の再生に向けた「KK線再生PROJECT」の一環として、KK線を管理する東京高速道路の加藤浩社長やKK線再生プロジェクトでクリエイティブコンダクターを務める齋藤精一氏、地域の関係者らが参加して開催されたもの。「多彩なゲストが参加し、Roof Park Project(ルーフパークプロジェクト)の哲学を共有し、これからのインフラ再生とまちづくりについてさまざまな視点で語り合う」場である。

東京高速道路 加藤浩社長

 東京都と東京高速道路は2025年7月に『東京高速道路(KK線)再生に向けた利活用方針』をまとめ、技術面の検証と社会実験の両面で先行実証実験を行う方針を示した。それはKK線を利活用するためのノウハウを蓄積する狙いがあり、各種技術の効果を実証することを目指している。

 KK線は首都高の日本橋区間が地下化されることにともない、都心環状線のルート変更が決定した。KK線の補強工事が難しい点などから道路としての機能廃止が決定。今後は「イベント空間や公園として跡地を活用する」方針が決まっている。

クリエイティブコンダクターの齋藤精一氏

 では、どんな公園・イベント空間にするのかを検討する催しが、冒頭で紹介したフォーラムだ。

「民間企業の当社が、公共空間を作るということにおいて、いかに公共性を保っていくのかが問われる。その部分において東京都と一緒になって進めているという点で、公共性に関する目が確保されているといえる。そして2020年11月にKK線跡地を遊歩道化することが決まり、多くの方から意見を頂戴することが公共性を担保するうえで大切。多くの専門家の知恵も借りたい。そうした状況から、共創プラットフォームを立ち上げた」と語るのは東京高速道路の加藤浩社長。

 共創プラットフォームは、事業者だけでなくいろいろな分野の専門家らが集まり。プロジェクトの計画段階からデザイン視点で議論・提案を進めていくことで、さまざまな分野が連携しながら一環したプロジェクトを進めていく仕組み。クリエイティブコンダクターの齋藤精一氏のほか、コンテンツプランナー、プロダクトデザイナー、スペースデザイナー、グラフィックデザイナー、コミュニケーションデザイナーが、共創フラットフォームのコアメンバーとして参加している。

東京都都市整備局都市づくり政策部まちづくり推進担当部長 谷内加寿子氏

 コアメンバー以外には、地元団体や都民、関係行政、関係者、協力企業が参加する。このプラットフォームがまとめた提案を受けて、事業推進者(事業者と東京都)が計画を具体化する仕組みだ。

 当日の催しのひとつ、コミュニティセッション#01『これからの公共空間のあり方とRoof Park Project』に参加した東京都都市整備局都市づくり政策部まちづくり推進担当部長の谷内加寿子氏は、東京都が掲げる『2050東京戦略』において、「スタートアップや文化・エンタメ、スポーツ、まちづくり・住まい、緑と水、未来競争といった戦略に、いまKK線が取り組もうとしているが関係している」と指摘。そのうえで「東京がこれからも輝いていくためには、KK線を都市の宝として皆さんと一緒に作っていける官民連携を考えていきた」と語った。

 東京を代表する歴史を持ち、日本の老舗ブランド、世界の一流ブランドが店舗を構える銀座というエリアに密接に関係するKK線はかけがえのない資産である。

 鉄道の事例になるが、高架の廃線をリノベーションした成功例として、米国ニューヨークのハイラインがよく知られている。1980年に廃線になったウエストサイド線の跡地を約2.3㎞の公園として再生させたケースだ。都市の中に作られた空中公園は、公共の公園として親しまれている。

KK線のルート。写真左側が新橋エリア、右側が京橋エリア。右上に見える弓形の壁面を持った建物が有楽町フォーラム

 共創プラットフォーラムのコアメンバー、色部義昭氏(グラフィックデザイナー)は「KK線の場合はクルマが通っていた道路というルーツがそのまま残るところ」がルーフパークプロジェクトの特徴だと指摘する。クルマが走っていた路面の感触、道路に下に約380店舗の商業施設を持つ高さ約8.5mから景観。高層ビルが林立する銀座エリアにありながら、ルーフパークの上には空が広がっている特別性。

 ルーフパークでのイベントに人々が集まり、地域と連携して特産品・名産品が生まれ、街の賑わいが増す。全長約2㎞のルーフパークプロジェクトが、どんな方向に発展していくのか。ゆっくりと成長していくプロジェクトの動きに注目しておこう。

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