【最新モデル試乗】スライドドア初採用。「新型ダイハツ・ムーヴ」は、スタイリッシュで便利で走り優秀。「実用車の鑑」に絶賛認定!

ムーブRS(FF)/価格:CVT 189万7500円。新型は「今の私にジャストフィット、毎日頼れる堅実スライドドアワゴン」をテーマに開発。メインターゲットは子離れ層。人気のスーパーハイトワゴン比で100mmほど車高が低いボディで、リアスライドドアを採用したのがセールスポイント

ムーブRS(FF)/価格:CVT 189万7500円。新型は「今の私にジャストフィット、毎日頼れる堅実スライドドアワゴン」をテーマに開発。メインターゲットは子離れ層。人気のスーパーハイトワゴン比で100mmほど車高が低いボディで、リアスライドドアを採用したのがセールスポイント

新型は7代目。Kカーの新たな主役が誕生した

 ダイハツ・ムーヴが7代目に移行した。新型は事情により予定からだいぶ遅れて発売されることになった。全軽自協のデータでは、従来型の生産が終了してからも、ムーヴの車名で毎月5000台以上が記録されていたが、その正体は、ムーヴキャンバス(以下「キャンバス」)だ。キャンバスがこんなに売れていることも印象的だが、本家のムーヴが発売されるや、6月のデータ(もちろんキャンバスも含まれる)では、王者N-BOXに次ぐ堂々の2位、7月も3位を獲得した。

ドア開口

室内フラット

 ムーヴはハイトワゴンに分類されるモデルである。Kカーの世界では、N-BOX、スペーシア、タントという全高が1.7m超のスーパーハイト系が圧倒的な売れ行きを見せている。ただ、個人的には本当にそこまでの高さと広さが必要なのかという気がしている。広さが最優先ではないユーザーは、全高1.7m以下のハイトワゴンにしたほうがむしろ賢明ではないかと思うのだ。ハイトワゴンでも広さは十分。しかも走りが断然いい。スーパーハイト系だって走りに不利なクルマをよくぞあれほどのレベルに仕上げているものだと感心するが、車高の低いハイトワゴンのほうが物理的に有利で、車両重量が軽くて燃費もいい。

 ただし、スライドドアがほしいからスーパーハイトを買うというのは理解できる。車高がそこそこでスライドドアというのは、まさしくキャンバスがそう。それが人気の大きな要因になっている。とはいえカワイイ系である。ベーシックなハイトワゴンでスライドドアという選択肢はこれまでなかった。それがついに実現した。新型ムーヴだ。車高はキャンバスと共通の1655mm(FF)、タントと比べると100mm低い。

X走り

X室内

 スライドドアの採用は、いうのは簡単だがいざ実現となるとコストや重量増といった諸々の問題があり、商品企画の段階では社内でも賛否両論だったそうだ。晴れてスライドドアで登場したことを喜ばしく思う。

 スタイリングは端正で精悍。箱型でスライドドアだとバランスが崩れるがちなところを、Aピラーを寝かせることで上手く対処した。
 ラインアップはL/X/G/RSの4グレード。パワーユニットはRSがターボ(64ps/100Nm)、その他は自然吸気(52ps/60Nm)を搭載。駆動方式は全グレードでFFと4WDが選べる。

低めの車高でも室内の余裕は十分以上。走りはターボ搭載のRSが本命。気持ちいい

 後席はさすがにスーパーハイトワゴン系ほどの天地高はない。とはいえ平均+αの体格をした成人男性が座っても頭上には十分すぎるほどの余裕がある。シートが左右個別に前後スライドできるのも重宝する。乗降性は優秀。これだけの開口部があれば十分だ。売れ筋のXは運転席側のスライドドアを、雨のときなどにパッと閉められるよう手動にしたという。電動はオプション。電動のほうが便利に思うが、入念なマーケット調査で導き出した結論には、説得力がある。

リア

インパネ正面

 走りの完成度は予想どおり高かった。新世代プラットフォームDNGAの高い基本性能と、適度な設定の重心高が効いて、乗り心地もハンドリングも良好に仕上がっていた。

 試乗したターボのRSと自然吸気のXではパワートレーンだけでなく足回りの調律も異なるが、上質な乗り心地と思いどおりに曲がれる操縦安定性を目指したシャシーの完成度はともに高い。

 路面からの入力の受け止め方は巧み。足がよく伸びてアンジュレーションをいなしてくれるので、視線のブレが小さいのがいい。

 ステアリングを切ると、切ったとおり素直に応答して戻る側の収まりもいいのは好印象。「よっこらしょ」という感じがない。スーパーハイト系にありがちな突っ張ったイメージはなく、コーナーが迫ってもスムーズに走っていけるのは大きな利点だ。

 15インチタイヤを履き高性能ダンパーを装備するRSは、いっそうしっかりとした接地感があり、操舵に対して俊敏にレスポンスする。電動パワーステアリングの設定が共通とは思えないほどだ。

前シート

後シート

 ターボと自然吸気ではそれなりに走り味が異なる。自然吸気も不満を感じさせないよう、アクセルの踏み始めからしっかり前に出るように味付けされている。それでも首都高のランプなどによくある上り勾配ではターボのようなわけにはいかない。

 その点ターボはどこを走っても余裕がある。ターボはダイレクト感を高めたD-CVTが組み合わされるのも特徴で、市街地ではアクセル開度が小さくてもスルスルと加速していき、低い回転が維持される。加速時にもいわゆるラバーバンドフィールがさほど気にならない。加速にもハンドリングにも一体感があって気持ちいい。静粛性はRSのほうが行き届いていて、より上質なドライブフィールが味わえた。

 全体としてムーヴの完成度は申し分なかった。プライスタグも戦略的。ベースモデルは135万8000円。FFなら売れ筋のXでも150万円を切り、RSも190万円未満という買い求めやすい価格を実現している。新型ムーヴに死角は存在しない。

エンブレム

諸元

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