フェラーリが後輪駆動プラグインハイブリッドモデル(PHEV)のスペシャルな高性能バージョン「296スペチアーレ」を発表。パワートレインにはシステム総出力880hp(648kW)を発生するチューンアップ版の3リットルV6ツインターボエンジン+電気モーターを搭載。革新的なエアロダイナミクスソリューションによりダウンフォースは296GTB比で20%向上。軽量化対策やサスペンションの専用セットアップなども実施して、ドライビングスリルとエンゲージメントの新たなベンチマークを具現化
伊フェラーリは2025年4月29日(現地時間)、プラグインハイブリッドモデルの「296GTB」のハイパフォーマンスモデルとなる「296スペチアーレ(296 Speciale)」を発表した。
▲フェラーリ296スペチアーレ 全長4625×全幅1968×全高1181mm ホイールベース2600mm トレッド前1665×後1632mm 車重1410kg 乗車定員2名 後輪駆動プラグインハイブリッドモデル「296GTB」の高性能バージョン
英語でスペシャルを意味する“スペチアーレ”の名を冠した新設定の296スペチアーレは、既存のPHEVベルリネッタ(クーペ)モデルである296GTBをベースに、3リットルV6ツインターボエンジン+電気モーターの出力アップや革新的なエアロダイナミクスソリューションによるダウンフォースの向上、カーボンファイバーマテリアルの拡大展開などによる軽量化および高剛性化、サスペンションの専用セットアップなどを実施して、ドライビングスリルとエンゲージメントを新たなレベルに引き上げたことが特徴である。
注目のパワートレインは、モータースポーツ向けの296チャレンジ(296 Challenge)に搭載する、チタン製コネクティングロッドや強化ピストン、軽量化したクランクシャフト、過給圧を高めたターボチャージャー、そして専用のエンジンマネジメントマップおよびF1由来のノックコントロールシステムを採用した2992cc・V型6気筒DOHCツインターボエンジン搭載。圧縮比は9.4:1に設定し、最高出力は296GTB比で37hpアップの700hp/8000rpm、最大トルクは同比で15Nmアップの755Nm/6000rpmを絞り出す。ここに、アップグレードしたダブル・ローターでシングル・ステーター型のMGU-Kモーター(最高出力132kW[180cv]/最大トルク315Nm)、新しいシフトアップ管理プロファイルを導入してシフト時間を短縮した8速デュアルクラッチギアボックス(8速DCT)、モーターとエンジンを切り離すトランジション・マネージャー・アクチュエーター(TMA)、総電力量7.45kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせて基本システムを構成。システム総出力は296GTB比で50hpアップの880hpを発生する。また、eマネッティーノと称するドライブモードでは、バッテリーがフル充電の状態で最長25kmの走行が可能なeDrive、始動時のデフォルトモードでパワーフローは効率を最大化するようマネージメントされて制御ロジックが内燃エンジンの介入を決定するHybrid(H)、エンジンを常に稼働してバッテリーの効率を維持し、いつでもフルパワーが発揮できる状態に設定するPerformance、バッテリーの再充電を抑えて最大のパフォーマンスを発揮するQualifyという4モードを用意。前後重量配分は前40:後60と後軸寄りに仕立て、最高速度は330km/h、0→100km/h加速は2.8秒、0→200km/h加速は7.0秒、フェラーリのテストコースであるフィオラノサーキットでのラップタイムは1分19秒を実現した。
▲パワートレインは2992cc・V型6気筒DOHCツインターボエンジン(700hp/755Nm)+MGU-Kモーター(132kW/315Nm)+8速デュアルクラッチギアボックス(8速DCT)+トランジション・マネージャー・アクチュエーター(TMA)+リチウムイオンバッテリー(総電力量7.45kWh)でプラグインハイブリッドの基本システムを構成。システム総出力は296GTB比で50hpアップの880hpを発生する
一方でビークルダイナミクスの面では、後述する徹底した軽量化に即した専用セッティングの6ウェイ・シャシー・ダイナミック・センサー(6w-CDS)のほか、6w-CDSが収集したデータを活用するABS evoコントローラーシステムや電動パワーステアリングとグリップ推定機能の統合システムを組み込んだことがトピック。また、ブレーキ・バイ・ワイヤ・ユニットやサイド・スリップ・コントロール(SSC)システム、EBDオールレンジオールグリップなどの最適化も図る。足もとには専用セッティングのケーシング構造やトレッドコンパウンドおよびパターンを採用したミシュランPilot Sport Cup2タイヤ(サイズは前245/35/後305/35ZR20)を装着した。結果として車高は296GTB比で5mmダウンし、コーナリング時の最大ロール角は13%縮小している。
基本骨格に関しては、296GTBから引き継ぐPHEV用プラットフォームをベースに、カーボンファイバー材ボディシェルを拡大展開するなどして軽量化および高剛性化を実施。車重は296GTB比で60kgほど軽減した1410kgに設定し、パワーウェイトレシオはフェラーリの後輪駆動ベルリネッタで最も優秀な数値となる1.60kg/hpを実現した。
エアロダイナミクスの向上を果たしたエクステリアのデザインも見逃せない。フロント部には296チャレンジと同様のフロントアンダートレイとフロントボンネットをダクトで連結したエアロダンパーコンセプトを採用。また、ボンネットには296 GT3の空力パッケージを反映してサイドに2組のルーバーを配置する。さらに、フロントバンパーの外部プロファイルやフロントアンダートレイ全体の最適化を実施。フロントディフューザーの幅を広げて、ボルテックスジェネレーターのシステムへの空気の流れをクリーンアップしたことも訴求点である。一方、リアセクションではFXX Kに採用した垂直フィンと小さなウィング、そして296チャレンジのバンパーの垂直外部プロファイルを1つの要素に融合させたサイドウィングを配備。また、アンダーボディと連携してエアフローの横方向の膨張を改善し、アクティブスポイラーが3つのエクストラクターベンチュリのポテンシャルを最大限に引き出す新しいディフューザーを装着した。結果として、ダウンフォースは時速250km/h時で合計435kgを発生し、296GTB比で20%のアップを実現している。
冷却性能の向上を図ったことも注目点。ボンネットにはフロントラジエーターから排出される熱風の流れをよりスムーズにするために、横方向の3連スリットを設定。また、カーボンファイバー製のサイドアンダースポイラーには、エンジンコンパートメントに効果的に空気を流すインテークを配備する。さらに、リアのカウルにも有効なエアダクトを組み込んだ。
ボディカラーについては、296スペチアーレのために特別に開発された、スポーツスピリットを強調する非常に鮮やかなグリーンの新色、ヴェルデ・ニュルブルクリンク(Verde Nürburgring)を設定したことがトピック。また、今回初めてホワイトのストライプも用意し、車体の全長にわたって1本または2本のストライプがルックスをレーシーに映えさせる。00から99までの任意のナンバーでカラーリングを補完することも可能とした。
内包するインテリアは、最新世代フェラーリのスペシャルモデルに適用されているのと同様の哲学、具体的にはドライバーのエンゲージメントの向上に的を絞った仕様変更を実施する。コクピットはメインのインストルメントクラスターをダッシュボードトリムの深い割れ目に埋め込み、またダッシュボードは表面を意図的にクリーンで張りつめた印象にアレンジ。さらに、彫刻的なドアパネルはダッシュボードとシームレスにつなげ、中央部には菱形状に深く彫り込んだ3次元的なエレメントを配する。そして、素材にはカーボンファイバーとアルカンターラを多用して、軽量化を図るとともにレーシーなイメージを強調。ドアパネルはカーボンファイバー材の1ブロックとミニマルなデザインで構成し、Hi-Fiシステムのスピーカーをこのゾーンに組み込む。センタートンネルのカバーもカーボンファイバー材で仕立てた。一方でシートに関しては、アルカンターラを張ったバケットタイプを装着。ヘッドレスト部にはフェラーリの象徴であるカヴァリーノ・ランパンテ(跳ね馬)を刻印している。
なお、296スペチアーレのイタリア本国での車両価格は40万7000ユーロ(約6610万円)~に設定。生産台数は制限されていないが、フェラーリは「非常に限定的なモデルになる」とコメントしている。