MINIの中でも“尖った存在”として知られるジョン・クーパー・ワークス(JCW)。その名はモータースポーツの伝説に由来し、かつては硬派すぎる走りが魅力だった。だが最新世代のJCWは、ゴーカートフィーリングという本質を守りつつ、上質さと扱いやすさを獲得。MINIを乗り継いできた竹岡圭が、その進化と理由に迫る。
何を隠そうワタクシ、このMINIに2001年の東京モーターショーでひと目惚れしまして、これまでに4台乗り継ぎました。最初はMINI3ドアモデル(R50)。このころは3ドアしかなく、クーパーというのはグレード名だったんですよね。
続いてもう一度MINI3ドア(R56)を購入。さらにその後にはクラシックMINIから数えても初の5ドアモデルとなる、MINI5ドア(F55)に乗り継ぎました。そして私としては初めてのSUV愛車となるMINIクロスオーバー(F60)へと、私のMINI遍歴は続いていったわけです。
思い返してみれば、当初3ドアモデルと呼ばれていたものはMINIクーパーという車名へと変わり、最後に購入したMINIクロスオーバーでさえ、現在ではMINIカントリーマンと名前が変わったりもしていて、そうか……もう24年以上も経ったのかと、時の流れの早さと、いつの間にか長くなったMINIの歴史にシミジミしちゃったりもします。
さて、そんな中、私が愛車として手を出して来なかったのが、今回試乗したジョン・クーパー・ワークス(以下JCW)。ホットハッチ好きなので、真っ先に手を出しそうなものですが、まずは価格的な問題、乗り換えるタイミングで、私のライフスタイルには合わなかったり、未導入だったりで、たまたま愛車候補にはならなかったんですよね。
そもそもJCWという名前は、1960年代にクラシックMINIを駆り、モンテカルロ・ラリーで3度も優勝するなど、モータースポーツ界を席巻したジョン・クーパーさん、という人の名前から取られていることもあり、MINIの中で一番のスポーツモデルとして君臨しています。
なので、最初の頃のJCWはとにかくガチガチに乗り心地が硬かったんです(笑)。ところが、MINI自体もだんだんと乗り心地がこなれてきて、クラシックMINIの時代から続くゴーカートフィーリングを残しつつ、しなやかなテイストを獲得していきました。 現行となる4代目は、見た目からも上質という言葉を得たような感じがして、何を隠そう最初は「これはもうMINIじゃない」と、思ってしまったのも事実なんです。
これまでMINIにずっと乗り継いできたからこそ、MINIの進化にまだ自分がついていけていなかったのでしょうね。というのも、発売されて1年経った頃に乗ってみたら「あれ?これはやっぱりMINIだな」と思ったからです(笑)。センターに鎮座する大きな丸いメーターは、有機ELの丸型メーターとなりましたが、運転席から目に入る全体の造形バランスや世界観は、やっぱりMINIだったんですよね。
実はこの有機ELメーターも、デザイナーさんのこだわりが詰まっておりまして、当初開発陣からは猛反対を食らったものを、「MINIのメーターは丸くなきゃダメだ!」と、踏ん張って対抗してくださったんだそうです。というのも、現在に至っても有機ELパネルは四角いものがほとんどで、丸いものは新たに作らなければならず、かなりコストが掛かってしまうからというのがその理由。でも、そこを譲らないでいてくださったからこそ、「やっぱりMINIだな」と思えるポイントのひとつになっているのだと思います。
ファブリックのインパネにはアンビエントライトと、旅行カバンのようなベルトがあしらわれ、メッキもゴールドがかったシルバーで品がよく、大人になった感じもありますね。ちなみにエクステリアは「シンプリシティ」というキーワードでシンプルに作り込み、リサイクルのしやすさを考慮してメッキを減らしたりと、環境への配慮もいち早く行っているのもMINIらしいポイントです。
走りについてですが、JCWは最高出力231㎰、最大トルク381Nmでとにかくパワフルです。JCWは燃費重視のグリーン、万能型のコア、刺激的なゴーカートという3種類のドライブモードを備えていますが、日常的にはグリーンモードでいいかも。試乗車はオプション設定となっているアダプティブサスペンションが装着されているおかげで、乗り心地的は想像以上に快適だと思います。
もう少しスピード領域が高い、たとえば高速道路などはコアモード。パドルにブースト機能が持たされているので、追い抜きもラクにできます。そして「今日は走りたい!」という気分のときには、選択すると「ヒャッホー!(みたいな)」というサウンドが鳴るゴーカートモード。オンザレール感覚の直進安定性、切れ味鋭いコーナリング、アクセルをちょっと開けただけでグワッとトルクも出るし、サウンドも迫力がありアクセルペダルを離すとポンポンポンッ、シフトチェンジの際のブリッピングの音なども凝っていて、エンジン音でワクワクさせてくれるクルマが減っている中、貴重な存在だと思います。
スポークの1本(下側)がラッシングベルトになっているハンドルはオシャレだとは思うのですが、私の手にはやや太すぎるのは唯一悩みの種かなぁ……でも、いい意味で「世界で一番ふざけたクルマ」は健在、いまや実はもっともMINIらしいと感じられるのがこのJCWといってもいいかもしれませんね。そんなMINIのヒットの真相は、時代を先取りし、時代を作り出す力なのだと思います。
1)ゴーカートフィーリングを核にしながら、乗り心地を大きく改善。刺激的でありつつ日常でも使える“大人のJCW”へと進化
2)有機ELの円形メーターや素材使いなど、MINIらしさを守り抜いたデザイン哲学。最新技術を取り入れても世界観を崩さない姿勢が支持を集める
3)ドライブモードやアダプティブサスペンションにより、走りの幅が大きく拡張。速さだけでなく楽しさを自在に引き出せる
