サーキットを楽しみ、自走で帰宅できる究極GT-Rを提案今回試乗したR35 GT-Rは、2013年モデルをベースにNISMOのS1エンジンメニューを中心としたファインチューンを施したコンプリート仕様。2007年の登場から18年にわたり進化を続けたR35 GT-Rは2025年8月に生産が終了した。2013年型のNISMO仕様は、現時点でもすでに「ヘリテージ」の領域にある。
S1エンジンは、NISMOが公式に提供する再生・強化メニューのひとつ。オーバーホールと同時施工を前提に出力とトルクの向上、よりフラットな特性を実現する。高額ながら、街乗りでの扱いやすさと高回転域の伸びを両立させた「新車以上のGT-R」を実現する仕様だ。
試乗車のS1エンジンは、GT3仕様カムシャフトと専用ECMを組み込んだ試作品。さらにチタンマフラー(50万円)、98万円のドライカーボン製フードを含むフルエアロ、そして最終型T-Specと同仕様のサスペンションを装着。時代を超える完成度を誇っていた。
NISMOが掲げるコンセプト、CRS(Clubman Race Spec)は、「サーキット走行を楽しみ、そのまま自走で帰宅できるGT-R」であり、このコンセプトを追求したT-Specサスペンションは、2025年8月まで生産されていた最終型GT-Rの主要部品をキット化したものである。
ちなみにNISMOは、R35がヘリテージ化していく中で全世代・全仕様のサスペンションを提供し続けるのは現実的に難しいと判断。最終型T-spec仕様とよりサーキット志向のNISMO仕様という、2つの完成形に整理する方向だ。長期供給体制を整えることで、貴重なR35を次世代へとつなぐ体制を構築しつつある。
試乗した2013年モデルは、ギアボックスからのノイズや振動がまだ強い時代で、最終型にはない荒々しさが味わえた。シフトパドルはコラム固定式で、GTマシン的な操作感。電動と油圧を併用したパワーステアリング制御は骨っぽい。それも味わいのひとつだ。新車当時あんなに重量感を感じた操縦フィールは、現代の大型化・重量化したクルマに慣れたいまでは、むしろ意外なほど軽快に感じた。
試乗の舞台はモビリティリゾートもてぎの南コース。タイトなコースレイアウトはGT-Rにはやや不利だったが、それでも安定感と加速力は圧倒的。やはりR35は素晴らしい。永遠のGTである。
一方、同時に試乗したオーラNISMO tuned e-POWER 4WDは、異なる方向性の速さを見せた。注目は公式ECMチューニング、NISMOスポーツリセッティング TYPE-2だ。6種類のドライブモードを最適化し、Dレンジは加減速をリニアに、Bレンジは回生制御を強化。踏みはじめから鋭く立ち上がる加速が印象的だった。
R35が「伝統と機械の極み」を体現する存在なら、オーラNISMOは「電子制御による次世代の速さ」を象徴している。
どちらもNISMOが考える「走りの楽しさ」をそれぞれの時代軸で表現した魅力的な存在である。
