マツダが【S耐DNA】を公道にリリース。MSRロードスター&12Rが示す次世代スポーツカー像

 マツダのモータースポーツ活動を担うサブブランド「MAZDA SPIRIT RACING」から、初の市販車モデルとなる「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(526万5700円)」と「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R(761万2000円)」が登場した。

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(左)と、主査 齋藤茂樹氏(左)、12号車(中)と、ドライバー 川田浩史氏(中)、MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R(右)と、MSR代表 前田育男氏(右)

▲MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(左)と、主査 齋藤茂樹氏(左)、12号車(中)と、ドライバー 川田浩史氏(中)、MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R(右)と、MSR代表 前田育男氏(右)

 「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」は、これまで日本仕様には設定のなかった2.0Lエンジンを搭載したソフトトップモデル。街中からサーキットまで、幅広いシーンで走る楽しさと上質な質感を両立したモデルとなっている。

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(2200台限定)

▲MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(2200台限定)

 一方の「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R」は、ベースモデルをさらに走りに特化させたコンプリート仕様だ。専用チューニングによって最高出力200ps(147kW、開発目標値)を発揮し、サーキット走行でのパフォーマンスを高めている。

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R(200台限定)

▲MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R(200台限定)

 今回発表されたスペシャルモデルは、マツダが参戦するスーパー耐久シリーズ(S耐)で培われた知見をフィードバックしたもの。12Rの名称も、実際にレースに参戦している「12号車」に由来している。

 この12号車「MAZDA SPIRIT RACING RS Future Concept」は、メーカー開発車両が参戦するST-Qクラスで走行実証を行う開発車両だ。カーボンニュートラル社会の実現を見据え、空力性能やシャシー性能の改善・検証を進めながら、「人を育て、技術を鍛える」ことを目標に挑戦を続けている。

日本を代表する耐久レース「スーパー耐久」シリーズに参戦する「MAZDA SPIRIT RACING」12号車

▲日本を代表する耐久レース「スーパー耐久」シリーズに参戦する「MAZDA SPIRIT RACING」12号車

 そのレースで磨かれた技術が、今回の市販モデル「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R」にも反映されている。専用開発の2.0Lガソリンエンジンをはじめ、S耐の現場で得られたノウハウが随所に息づく、マツダ渾身のピュアスポーツだ。

12Rと12号車

▲MAZDA SPIRIT RACINGのロゴ、フロントエアロパーツ、特徴的なセンターのボディラインから同じスピリットから生まれたクルマだと感じさせる

 ディテールをみていこう。ST-Qクラス参戦車「12号車」は、見た目こそロードスターそのものだが、足回りは完全に「プロトタイプ」。RAYSと共同開発した専用鍛造ホイール、Brembo製ブレーキ、エンドレス製ブレーキパッドなどが組み合わされ、市販モデル12Rの開発母体として、精度と耐久性を極限まで突き詰めている。

12号車に装着されるRAYS製 TE37(専用鍛造)。サイズはフロント 17×8J+41、リア 17×8J+36、幅は非公開(7.5J〜8J前後)

▲12号車に装着されるRAYS製 TE37(専用鍛造)。サイズはフロント 17×8J+41、リア 17×8J+36、幅は非公開(7.5J〜8J前後)

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R 足回り ホイール外周には「MAZDA SPIRIT RACING」のロゴをあしらいリム部に削り出しデザインがある

▲MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R 足回り ホイール外周には「MAZDA SPIRIT RACING」のロゴをあしらいリム部に削り出しデザインがある

 撮影した「12R」には、MAZDA SPIRIT RACING専用アクセサリーパーツが組み合わされており、ブレンボ車製「SPORT TY3ディスク(スリットローター)/スポーツパッドSP2 (スポーツパッド・計18万3260円)」やオプションとして提供されるスポーツタイヤ「ADVAN NEOVA AD009(205/45/R17・オープン価格)」、スポーツタイヤに合わせたサスペンションセッティングを提供する「スポーツアライメントキット(6万2722円)」が装着されていた。

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 足回り

▲MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 足回り

 インテリアの「質感」にもこだわったという2台のスペシャルモデル。黒を基調にしたインテリアにはアルカンターラ®素材を採用し、光の反射による視認性の低下を抑えることで、ドライビングに集中できるコックピットを目指している。インパネやドアトリムだけでなく、ハンドルやシフトノブ、パーキングレバーなどにもアルカンターラ®素材を使い、操作時のグリップ力を高めた。

レース車両のようなスパルタンな雰囲気と、上質さを両立させた仕上がりだ。手に触れる部分の日常使用での摩耗を抑えるためにも、ドライビンググローブが最適だろう。

※アルカンターラ®はアルカンターラ社の登録商標。

レーシングカー12号車のコックピット。ステアリングはレーシンググローブの着用時に抜群のグリップを約束するスウェードタイプを採用

▲レーシングカー12号車のコックピット。ステアリングはレーシンググローブの着用時に抜群のグリップを約束するスウェードタイプを採用。助手席ダッシュボードのMAZDA SPIRIT RACINGのロゴも市販モデルと対となるデザイン

MAZDA SPIRIT RACING 12R インテリア

▲MAZDA SPIRIT RACING 12R インテリア

MAZDA SPIRIT RACING インテリア

▲MAZDA SPIRIT RACING インテリア

 MAZDA SPIRIT RACINGのロゴには、明確な意味が込められている。

 マツダの「魂動(こどう)デザイン」の生みの親でもあり、現在MAZDA SPIRIT RACINGの代表兼レーシングドライバーを務める前田育男氏によると、ロゴの円は「地球」を、中央の赤い三角形は「モータースポーツの火」を象徴しており、「この地球の中でその火を灯し続ける」という思いを表しているという。

MAZDA SPIRIT RACING ロゴ(12R)

▲MAZDA SPIRIT RACING ロゴ(12R)

 赤い部分はまさに「灯火(ともしび)」の意味を持ち、ブランドとして「モータースポーツの情熱を絶やさない」意志を示している。実際、マツダ公式も「モータースポーツの火を絶やさないために」という言葉を掲げており、ロゴ全体がその理念を体現する存在だ。

センターディスプレイに映し出されるMAZDA SPIRIT RACINGのロゴ

▲センターディスプレイに映し出されるMAZDA SPIRIT RACINGのロゴ

 限定販売という関係もあり、今後現実ではなかなか出会えないかもしれない2台のロードスターだが、PlayStation®4/PlayStation®5用ドライビングシミュレーター『グランツーリスモ7』では、その「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12r」を存分に走らせることができる。

 2.0Lエンジンによる重量配分の違いやLSDの特性、タイヤのグリップ差など、リアルさを追求した挙動モデルを通して「走りの違い」を体感できるのが魅力だ。

筆者が、グランツーリスモ7で12Rを運転する様子

▲筆者が、グランツーリスモ7で12Rを運転する様子

 フォトエスケープで撮影しても絵になるし、モデリングの完成度も高い。現実とシミュレーション、リアルと非リアルが自然に溶け合う感覚がある。

 マツダが描くモータースポーツ活動の延長線上に、その「もうひとつの現実」があるような気がして、どうにも惹かれてしまう。

 
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