1台のクルマで多様なモビリティサービスに対応するよう設計したトヨタ「e-Palette」が発売

トヨタが多様なMaaS(Mobility-as-a-Service、モビリティサービス)に対応して新たな移動体験を提供する新型バッテリーEV「e-Palette」を発売。まずは「TOYOTA ARENA TOKYO」およびその周辺エリア、「Toyota Woven City」から導入し、輸送サービスでの活用や物品等を販売する移動型店舗など、さまざまな取り組みを実施。車両価格は2900万円~に設定

 トヨタ自動車は2025年9月15日、さまざまなモビリティサービスに活用できるバッテリーEV「e-Palette(イーパレット)」を発売した。車両価格は2900万円~の設定で、当面はトヨタが直接注文を受け付け、受注生産にて販売する。

▲トヨタe-Palette 価格:2900万円~ 全長4950×全幅2080×全高2650mm 車重2950kg 乗車定員17(4+12+1)名 一充電航続距離はWLTCモード相当で約250kmを実現

▲トヨタe-Palette 価格:2900万円~ 全長4950×全幅2080×全高2650mm 車重2950kg 乗車定員17(4+12+1)名 一充電航続距離はWLTCモード相当で約250kmを実現

 e-Paletteは多様なMaaS(Mobility-as-a-Service、モビリティサービス)に対応して新たな移動体験を提供する新世代のバッテリーEVとして開発。2018年1月に開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)において豊田章男社長(現・会長)がモビリティ・カンパニーへの変革を宣言した際に初披露し、2019年開催の東京モーターショー2019にも出展され、2021年開催の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では選手村内を巡回するバスとして実際に運行される。その後、レクサス車を生産するトヨタ自動車九州 宮田工場での実証や各種イベントへの参加など市販化に向けて着実に開発を推し進め、そして今回ついに販売を開始することとなった。

▲ヨーロッパのデザイン開発拠点である「EDスクエア」がデザインコンセプトを手がけ、基本的にはそのデザインを踏襲しつつ、フロントまわりなどのアレンジを愛らしく思ってもらえるよう、日本のチームで再構築する

▲ヨーロッパのデザイン開発拠点である「EDスクエア」がデザインコンセプトを手がけ、基本的にはそのデザインを踏襲しつつ、フロントまわりなどのアレンジを愛らしく思ってもらえるよう、日本のチームで再構築する

▲リアセクションはフロントと同イメージで先進的かつキュートに仕立てる

▲リアセクションはフロントと同イメージで先進的かつキュートに仕立てる

 ヨーロッパのデザイン開発拠点でフランスのニースに居を構える「EDスクエア」がデザインコンセプトを手がけ、基本的にはそのデザインを踏襲しつつ、フロントまわりなどのアレンジを愛らしく思ってもらえるよう、日本のチームで仕上げて現在の姿になったe-Paletteは、移動可能な多目的スペースとして使用することを想定し、長身の乗員でも直立した状態で自由に動ける室内高(2135mm)を確保。また、箱型フォルムの外寸(全長4950×全幅2080×全高2650mm)に対して可能な限り広いスペースを実現するために、タイヤを四隅に配してフラットなフロアを創出する。乗車定員は17(4+12+1)名。ドア開口部は幅1280×高1900mmを確保し、フロア高は370mm(車高調整オプション使用時270mm)に設定した。

▲ドア開口部は幅1280×高1900mmを確保し、フロア高は370mm(車高調整オプション使用時270mm)に設定

▲ドア開口部は幅1280×高1900mmを確保し、フロア高は370mm(車高調整オプション使用時270mm)に設定

 パワートレインには最高出力150kW/最大トルク266Nmを発生する電気モーターに、総電力量72.82kWhのリチウムイオン電池を組み合わせて搭載。最高速度は80km/hとし、一充電航続距離はWLTCモード相当で約250kmを実現する。充電はAC普通充電とDC急速充電に対応し、AC6kWの普通充電では12時間程度で満充電、DC90kWの急速充電では40分程度で80%までの充電を可能とした。

▲パワートレインには最高出力150kW/最大トルク266Nmを発生する電気モーターに、総電力量72.82kWhのリチウムイオン電池を組み合わせて搭載。充電はAC普通充電とDC急速充電に対応する

▲パワートレインには最高出力150kW/最大トルク266Nmを発生する電気モーターに、総電力量72.82kWhのリチウムイオン電池を組み合わせて搭載。充電はAC普通充電とDC急速充電に対応する

 e-Paletteは1台のクルマでさまざまなモビリティサービスに対応するよう設計しており、ユーザーにマルチな使い方を提供する。例えば朝・晩はシャトルバスとして、日中は充電しながらの店舗営業など、多様な機器を搭載することで1日の中で異なる用途での活用が可能。また、広い車室空間に架装を行えば、さらに多様な用途に対応。遠隔通信や音響機材などを活用して移動しながら臨場感とともにスポーツ観戦を楽しんだり、没入体験とともに観光を楽しんだりすることができるエンターテインメント車両としての利用も可能としている。

▲朝はシャトルバス、昼はキッチンカー、夜はスポーツ観戦など、ユーザーにマルチな使い方を提供

▲朝はシャトルバス、昼はキッチンカー、夜はスポーツ観戦など、ユーザーにマルチな使い方を提供

▲車両が停止した状態でも給電が可能

▲車両が停止した状態でも給電が可能

▲電動スロープを設定し、歩道高さ15cmの場合車いすの乗員が介助なく自力で乗降することが可能。車いすのワンタッチ固定などのオプションも用意

▲電動スロープを設定し、歩道高さ15cmの場合車いすの乗員が介助なく自力で乗降することが可能。車いすのワンタッチ固定などのオプションも用意

 先進装備を満載していることもe-Paletteのトピックだ。運転の面では、次世代の操舵感覚をもたらす「ステアバイワイヤシステム」を導入し、ステアリング操作量を軽減することで運転手の負担を低減。また、異形ステアリングを採用して、先進的なコクピットを演出する。さらに、利用シーンに応じた表示が可能なデジタルサイネージを車内外に装備。ユーザー自ら編集可能なサイネージソフトも提供し、さまざまな情報の発信を可能とした。ほかにも、安心降車アシストに加えて車室内監視システムにてドア周辺を監視する機能を装備し、ドア開閉の安全確認をサポートしている。

▲次世代の操舵感覚をもたらす「ステアバイワイヤシステム」を導入。合わせて異形ステアリングを採用して、先進的なコクピットを演出する

▲次世代の操舵感覚をもたらす「ステアバイワイヤシステム」を導入。合わせて異形ステアリングを採用して、先進的なコクピットを演出する

▲利用シーンに応じた表示が可能なデジタルサイネージを車内外に装備

▲利用シーンに応じた表示が可能なデジタルサイネージを車内外に装備

 安全・安心を第一とした自動運転に対応した点も見逃せない。今回の発売時点では、運転の自動化レベル2相当の自動運転システムに対応可能で、2027年度にはレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指す。具体的には、トヨタの車両制御インターフェース(VCI:Vehicle Control Interface)に対応して開発されたさまざまな開発会社による自動運転システム(ADK:Automated Driving Kitを指し、自動運転制御ハードウェアおよびソフトウェア、カメラやLiDARといったセンサーなどを含む)を組み込むことで、自動運転に対応することが可能。また、自動運転システムと車両制御システムの接続を標準化するとともに、システムの堅牢性や信頼性を高めるための冗長システムも搭載した。さらに、スムーズな自動運転オペレーションを助ける運行管理システムとの連携も可能としている。

▲トヨタの車両制御インターフェース(VCI)に対応して開発されたさまざまな開発会社による自動運転システム(ADK)を組み込むことで、自動運転に対応することが可能

▲トヨタの車両制御インターフェース(VCI)に対応して開発されたさまざまな開発会社による自動運転システム(ADK)を組み込むことで、自動運転に対応することが可能

 なお、トヨタは9月25日にオフィシャルローンチを迎えたモビリティのテストコースである「Toyota Woven City(トヨタ ウーブンシティ)」において、e-Paletteを活用した飲食などサービス提供のプラットフォーム機能の実証をスタート。さらに、10月3日にオープンするTOYOTA ARENA TOKYOでも同車の実証を行うとアナウンスしている。

▲Toyota Woven Cityではe-Paletteを活用した飲食などサービス提供のプラットフォーム機能の実証を開始

▲Toyota Woven Cityではe-Paletteを活用した飲食などサービス提供のプラットフォーム機能の実証を開始

 

 

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