【最新モデル試乗】美しき革新、次世代フラッグシップ「プジョー5008」の華麗なるフレンチテイスト

プジョー3008GTアルカンタラPKGハイブリッド/6DCT 558万円。3008はプジョーのフラッグシップという性格。販売がスタートしたMHEVモデルは、アリュール/GT/GTアルカンタラPKG(写真)の3グレード。価格は489万〜558万円。1.2リッターターボ(136ps)+モーター(16kW)の48VマイルドHV搭載。駆動方式はFF

プジョー3008GTアルカンタラPKGハイブリッド/6DCT 558万円。3008はプジョーのフラッグシップという性格。販売がスタートしたMHEVモデルは、アリュール/GT/GTアルカンタラPKG(写真)の3グレード。価格は489万〜558万円。1.2リッターターボ(136ps)+モーター(16kW)の48VマイルドHV搭載。駆動方式はFF

時代は変わった。いまやフラッグシップをクーペSUVが担う

 新型プジョー3008がデビューした。世界で累計132万台超を販売した人気モデルの後継として8年ぶりにモデルチェンジした新型は、車名が「3」から始まるCセグメントのSUVながら、プジョーの次世代フラッグシップモデルに位置づけられている。ボディサイズは従来比でひと回り大型化し4565×1895×1665mmに拡大。ワイドな全幅が印象的だ。

 パワートレーンはMHEVとBEVという2種の電動タイプ。こちらは既出のグループ内BROS車と共通だが、3008のプラットフォームは最新の次世代型。ステランティスがC~Dセグメント向けに新たに開発した電動車用プラットフォーム、STLA-Mediumを使用した初のモデルとなる。このSTLA-MediumはBEVに最適化した設計でありながら、ハイブリッドをはじめ多様な動力源に対応。将来の発展まで視野に入れた柔軟性と、高い拡張性を兼ね備えている。ホイールベース、全長、地上高、サスペンション形式などに合わせた変更が容易な点も特徴だ。

フロント

リア

 BEVのE-3008は年内の発売を予定。まずは、発売された1.2リッター直3ターボ(136ps/230Nm)とモーター(16kW/51Nm)を内蔵した6速DCTを組み合わせたMHEVの上級グレード、GTアルカンタラパッケージHybridに試乗した。

 スタイリングは鮮烈な印象を放つ。3008は過去2世代も個性的なスタイリングだったが、3代目はさらにチャレンジングだ。クーペの流麗さとSUVの力強さを融合したフォルムは、近くで見ても離れて眺めても存在感がある。ドットパターンを散りばめた大型フレームレスグリルを筆頭に、プジョーならではのライオンの爪痕をモチーフにしたLEDデイタイムランニングライト、リアの独特な形状のスポイラーや立体造形のLEDランプなどなど、見れば見るほど印象的だ。ちなみに19インチの大径アロイホイールのYARIは、日本の北アルプスの槍ヶ岳に由来するネーミングという。

俯瞰

室内イメージ

 個性の強さは、むしろインテリアのほうが勝るかもしれない。プジョーといえば小径ハンドルとハイマウントメーターを組み合わせたi-Cockpitで知られるが、新型3008にはさらに新しいPanoramic i-Cockpitが採用されている。

 緩やかにカーブした21インチのパノラミックスクリーンがフローティングするかのようにレイアウトされ、コンソール中央にあるi-Toggles(アイトグル)は計10個のショートカットキーをカスタマイズし、エアコンやナビゲーションなど頻繁に使う機能に素早くアクセスして直感的に操作できる。

 ダッシュボードからセンターコンソールにかけては斜めに切れ込む大胆なラインで構成。スペースを稼ぎながら機能性を高めているのも面白い。デザインと実用性の両面でナイスアイデアだと思う。

 シートの出来も秀逸である。アルカンタラパッケージのシートは見た目の質感もホールド性にも優れる。サイドサポートにフィット感を好みに調整できるアダプティブボルスター機能が新搭載された。

前シート

後シート

 後席は頭上がなだらかに傾斜しているものの、成人男性の平均+αの体格のパッセンジャーが座っても不満を感じない広さ。センタートンネルがなくフロアがほぼフラットなのもうれしい要素だ。リアシートは3分割可倒式。長尺物を積んでも4名が快適に座れる。

 荷室は520~1480リッターと広い。横方向はタイヤハウスに合わせた幅となっているが、ファストバックスタイルながらスパンと切り落としたリアエンドが容量を稼ぐうえで有利だったようだ。床下収納も広く、フロアボードは簡単にパーティションにもできる。GTはハンズフリー電動テールゲートを標準で装備する。

大柄ボディを小排気量MHEVで走らせる。インテリジェンスを感じる

 3008は、ステランティス共通のマイルドハイブリッドシステムをまったく新しいプラットフォームに積んだ点が特徴。その走りは完成度が高く、インテリジェンスを感じる。

 マイルドハイブリッドでありながら低速時の100%電動走行を実現しており、リリースで説明しているとおり「約30km/hまで電気による走行が可能」だという点はさすがである。ただし最近乗った一連のクルマの中では車両重量が1620kgと重いせいか、「市街地では最大50%の時間でエンジン停止状態を維持」という説明よりは、電気での走行時間が短かった気がした。

 WLTCモード燃費は19.4km/リッターと良好。輸入CセグメントSUVで唯一、環境性能割1%対象となることを強調しておこう。

走り

プラットフォーム

 加速はスムーズでなかなか力強い。モーターのアシストによる滑らかな発進とスピードの伸びは心地よく、1.6トンを超える車体を1.2リッターエンジンで支えられるのかという心配は早々に解消した。音や振動もフラッグシップにふさわしく入念に対策されていた。ほぼ全域で3気筒を意識させられることはなかった。

 ドライビング環境やハンドリングも好印象。小径ステアリングの上にメーターが配置されるレイアウトは従来と同じだが、Panoramic i-Cockpitには違和感がなかった。ステアリングは軽くほどよくクイックで、軽い力でスイスイと曲がれるのは楽しい。ドライブモードに連動して走りとともにアンビエントライトの色が変わるのも心憎い。

 猫足の進化版となる足回りは絶妙な味つけだった。実はかなり引き締まっているはずだが、ほどよくしなやかさも持ち合わせている。大径タイヤによるバネ下の重さの影響もよく抑えられていてバタつきは気にならない。

インパネ

ドア開け

 好印象には新開発プラットフォームも効いているに違いない。3008は世代を重ねるごとに洗練され、路面からの入力の受け方がどんどん上手くなっている。また、前席と後席で乗り心地の印象があまり変わらない点も印象的だった。リアシートにもヒーターが付いており全席コンフォートの思想が徹底しているのは間違いない。このクラスでここまで後席に気を配ったクルマは心当たりがない。3008はフラッグシップを名乗るだけに入念に作り込まれている。
 3008は、想像していた以上の完成度が印象的だった。フレンチアバンギャルドの代表として実に魅力的である。

エンブレム

諸元01

諸元02

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