レースが好きで、「自分でも走ってみよう!」と思ったときに、最も高いハードルとなるのが車両の用意だろう。街を走るクルマそのものでレースが行えるナンバー付きのレースであっても、レース仕様車に仕上げるために数十万円以上が必要だ。ナンバーなしのレース専用車であれば、車両そのものは安くても、別途にメンテナンスや運搬などの費用がかかる。そうしたレース用の車両にかかる費用は、レースのカテゴリーのレベルが上がるほどに、やはり高くなっていくものだ。
そんな高いハードルを下げるアイデアが、「買うのが高いなら、借りればいいのではないか」というもの。そうしたレース車両をレンタルするというビジネスは、昔からあって、古今東西、さまざまな人が利用してきた。
とはいえ、まったくの初心者がレース車両をいきなりレンタルするというのは、なかなか難しいのが実情だ。何といっても初心者であるから、ノウハウがない。適正価格がわからないし、何をすればよいのかというスキーム的な問題もあるからだ。
それに対して、レース車両を貸し出すだけでなく、レッスンなどのスキル面も含めてサポートしてくれるのが、HC GALLERYの“HC SHARING(エイチシー・シェアリング)”というサービスである。これは、名称のとおりにレース用の車両をシェア(年間契約)するだけでなく、レーシングシミュレーターと広場トレーニングといった運転のトレーニングと、リアルなサーキット走行時のサポートまでが用意されている。最大の特徴は、サーキット走行未経験という、まったくの初心者でもOKというところ。さらに、何にどれだけの費用がかかるのかが、しっかりと明記されいる、ガラスの会計というのもうれしいポイントといえるだろう。
HC GALLERYの佐野順平代表。月会費3300円(年間契約)で会員になると、初心者の場合は広場トレーニング(写真右上)を1〜5回、シミュレータートレーニングを1〜5回行ってからサーキットデビューできる
「自分がほしいと思っていたサービスを始めたんですよ」というのはHC GALLERYの代表を務める佐野順平さんだ。 佐野さんはビジネス畑を歩んできた人物であり、ジェントルマンレーサーとして趣味でモータースポーツを楽しんできた。「サーキットを走りたい」、「レースに参加したい」と思いつつも、何から手を付けてよいのかがわからずに苦労してきたともいう。そうしてキャリアを積み重ねる中で、サーキット仲間たちと「誰かがレース車両を1台作って、それを仲間で乗り回す」というところからレンタルのビジネスが始まった。 その一方で、佐野さんは、日本のレース業界を見ている中で、決定的に足りないところがあると感じたようだ。
「日本には“育てる”という考えが足りないと思います。レースを見て楽しみ、腕を磨き、競って楽しむまではできています。でも、その先に、次の世代を育てるというスキームがありません。バックグラウンドのない若者を育てていきたいのです」と佐野さんはいう。 そうした佐野さんの考えがあったからこそ、HC GALLERYは、レース車両を貸し出すだけでなく、スキルを学ぶためのレーシングシミュレーターや、広い駐車場にパイロンを並べたスペースでのトレーニングなどのメニュー、さらにはサーキットデビュー、そしてレースデビューまでのサポートというサービスを用意しているというわけだ。
「お客さんと一緒に、学び、育っていきたいんですよ」と佐野さん。 ちなみに、まったくの初心者が“レースに出たい”と、HC GALLERYの扉を叩いた場合、レーシングシミュレーターでの訓練、実車を使った広場でのパイロン走行トレーニング、そしてサーキットデビューと走行を繰り返し、その先に、ようやくレースデビューになるという。早い人で半年程度、通常であれば1年近く、時間をかけて、しっかりとトレーニングしたうえで、レースに送り込むというのだ。そのため初心者によるサーキットデビューでのクラッシュはゼロであるし、サーキット走行でもお客さんによる大クラッシュはほとんどないという。だからこそ、「数万円+サーキット実費(サーキット走行料金など)」程度、という手ごろな価格で、サーキット走行が楽しめてしまうのだ。ちなみに、クラッシュした場合でも免責20万円で済む保険も用意されている。 自分でレース車両を手に入れることに比べると、なんというリーズナブルさなのだろうか! しかも、手厚いサポートもあるので、スキルアップも期待できる。
もちろん、「シミュレーターや広場での訓練など面倒くさい」と考える人もいるだろう。「人に指示されるのが嫌」という人もいるはずだ。そういう場合は、手っ取り早く、レース車両のレンタルだけというサービスも、世の中の多くのレーシングガレージに用意されている。だが、これは上級者向けと考えたほうがいい。
HC GALLERYが用意するレース車両は、トヨタGR86やマツダ・ロードスターなど、ワンメイクレースに対応した車両ばかりだ。GT3やGT4などのより速いカテゴリーにトライしてみたい人は、S耐やGTアジアなどに参戦しているガレージを訪ねてみよう。
どちらにせよ、重要なのは、「レース車両が高いなら、借りるという方法がある」ということ。「レースをしたいけど、レース車両を買うのが難しい」と思っているなら、「レンタルする」という選択肢があることを知っておこう!