車両はレンタルでもスーツ類は自前で揃えたい。さて、ご予算は?

車両はレンタルでもスーツ類は自前で揃えたい。さて、ご予算は?

 レースに出場する際はレンタル車両で対応できることは本誌記事(2025年8月号)で紹介した。いよいよ、競技に参加するとなれば、レーシングギアを揃える必要がある。レンタル品を利用する方法もあるが、自分好みのウエアでサーキットデビューを飾りたいものだ。

 今回は、alpinestars(アルパインスターズ)の総輸入元、SPKに取材した。alpinestarsは創業60年以上の歴史を持ち、多くのレーシングドライバー、ライダーに愛用されてきた。アマチュアでモータースポーツに参加しているドライバーたちにも人気が高く、プロのレーサーやワークスチームの採用実績も豊富だ。ここではウエア類を中心に紹介する。

ATOM SUIT/10万8900円

 レーシングスーツ(オートスーツ)の場合、FIA(国際自動車連盟)の安全基準をクリアした製品を選ぶ。alpinestarsの製品はどれもこの基準を満たしているので、価格とデザインで決めればいいだろう。エントリーモデルとして、ATOM SUIT(アトムスーツ)が用意されており、価格は10万8900円。「軽さのためにベルトやポケットを排除した」と説明するHYPERTECH V3 SUIT FIAは34万5400円。レースの映像などを見ているだけではわからないが、レーシングスーツは、実際に手に持つとかなり重い。できれば試着して体の動きなどを確認してから購入するといいだろう。

TECH-1 START V3 GLOVES/1万9580円

 モータージャーナリスト、エディターとして活動する加藤英昭さんにレーシングギア選びのコツを聞いた。加藤さんはカー・アンド・ドライバー・レーシングチームで「マツダ・ロードスター・メディア対抗4時間耐久レース」にレーサーとして参加すると同時に、データアナリストとしてドライバーに的確な指示を発信。アマチュアレースを心から楽しんでいるドライバーである。

右手前が加藤英昭さん。レースを前にドライバー、スタッフたちと記念撮影

 加藤さんの話を紹介する前に、その他の必需品を紹介しておこう。alpinestarsの場合、レーシンググローブはスタンダードなTECH-1 START v2 GLOVESが1万8480円。レーシングシューズはエントリーモデルのSP V2 SHOESで3万580円である。

 

SP + SHOES/4万480円

 これに耐火炎素材を使ったアンダーウエア(上下)、ソックス、バラクラバなどが加わり、これら一式でalpinestarsの場合は6万円程度。最初にそろえる際には、結構な金額になる。

「レーシングスーツはサイズ選びが難しいです。できれば試着してから決めたいところです。メーカーのサイズ表示を見ただけでは判断しきれない部分があります。サイズ選びという点はヘルメット、シューズも同様です。ヘルメットは小さいと、どうやっても着用できません。シューズは履き心地、フィット感などが気になるので、スーツと同様に試着するといいでしょう」と試着の重要性を強調する。
「安いからといって、FIAの公認を満たしていない製品を購入すると着用できないので気をつけてください。また、ヘルメットもウエアも使用期限ある点にも注意が必要です。最近、レーシングスーツを購入しましたが、価格を重視しても6万円以上はしました。アンダーウエアまで一式揃えると、どうしても20万円程度は必要になると思います」と加藤さん。FIAが定める安全基準を厳守することは、レースに参加する際の最低限のルール。サーキット走行会など、走りを追求したい場合などは安全性に配慮したギアを選択すると考えよう。

ヘルメットとハンスを着用して担当するスティントに向けて準備を整える加藤さん

 さて、ヘルメットはお気に入りのレーサーが着用しているメーカー、ブランドにこだわってみるのもいいだろう。価格は7万円程度から。ただし、ヘルメットにオリジンナルのデザインやカラーリングを施したのなら、CiNQ PAiNT(サンクペイント)のようなプロショップに依頼するのがお勧めだ。こちらにオーダーした場合、スタンダートプランが6万6000円、最も手の込んだプレミアムプランの場合は13万2000円である。デザインやカラーによっては追加料金が必要になるが、マイオリジナルをアピールできるアイテムだから吟味のしがいがある。

 このほか頭や首を保護するためのHANS(ハンズ、ハンス)もあったほうがいい。

 購入後の手入れはどうすればいいのだろうか。汗をかいたレーシングスーツなどは、どう扱うのが好ましいのか。

 alpinestarsによれば、「レーシングスーツは自分で洗うのがお勧め」だという。ドライクリーニングの場合、FIA公認を示すホログラムを溶かしてしまう恐れがある。洗濯機を使う場合は、スーツを裏返してたたみ、洗濯ネットに入れて弱水流で洗う。脱水は短時間にして、裏返したまま日陰の風通しのいい場所で干すのだという。保管時は直射日光や紫外線(蛍光灯など)を避ける注意が必要だ。レーシングシューズやレーシンググローブの手入れ方法などと合わせてalpinestarsのホームページで紹介さているので、レーシングギアを購入した際には必ず確認しておこう。 

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