三菱自動車が技術支援する「チーム三菱ラリーアート」は、8月8日(金)~16日(土)タイで開催されたアジアクロスカントリーラリー(以下AXCR)2025にピックアップトラック『トライトン』(T1仕様=改造クロスカントリー車両)で参戦し、総走行距離2316.32km、うち競技区間1002.95km※を走破し、チャヤポン・ヨーター選手が16時間15分12秒で総合優勝、田口勝彦選手が総合5位、小出一登選手は総合22位となった。
またチームとして3台以上完走し、上位2台の合計タイムの早い順で競われるチーム賞も2年ぶり2度目の獲得した。
※実際の距離はコース変更により短縮されている。
AXCRは、アジア特有の荒れた路面と気候の中、山岳部やジャングル、海岸、プランテーションなどを舞台として争われるFIA公認のアセアン最大規模のクロスカントリーラリーだ。
今年のAXCRは、タイ・パタヤの有名観光地であるウォーキングストリートでセレモニアルスタートを実施。翌日のレグ1から本格的なラリーをスタートし、パタヤから北東へ約360km移動したタイ東部プラーチーンブリーで、大会最長の競技区間(スペシャルステージ、以下SS)となる199.13kmを競った。
レグ2はプラーチーンブリーから、北へ約500km移動したカオヤイでSSを実施。岩場のセクションあり、農園の中を駆け抜けるハイスピードセクションありと、AXCRらしくバラエティに富んだものとなった。
レグ3はカオヤイ周辺でSSを実施。過酷なコースに加え、午後になるとスコールにより路面がマッドに変わり、多くの車両が苦戦。
カンボジアとの国境50km以内を走行するレグ4、6は、タイとカンボジアの国境閉鎖の関係で、安全性を考慮しキャンセルとなったが、レグ5は予定どおりプラーチーンブリーへ戻り、近郊でSSを実施した。
SS1と同じルートが使用されたが、レグ1でさまざまな車両が走行したために轍が深くなる、連日の雨で立木が倒れるなど、コースコンディションが悪化し、上位の車両も数台スタックする過酷な1日となった。
レグ7では再びスタート地点であるパタヤへ移動。コース序盤の一部はSS1、5と同じルートを使い、大規模農園の中を走る狭いセクション、穴だらけの路面、川渡りのあるSSを走り切り、最終日となるレグ8はパタヤのバリハイ桟橋でゴールを迎えた。
▲112号車を駆るドライバー:チャヤポン・ヨーター選手/コドライバー:ピーラポン・ソムバットウォン選手組。チャヤポン選手はタイ国内の数多くのラリーやレースで活躍中。2022年のAXCRでは、チーム三菱ラリーアートに初出場初優勝をもたらした経験を持つ実力者だ
チームのエースドライバー、チャヤポン・ヨーター選手は、今年は12番手スタートながらもレグ1から好タイムをたたき出し、初日を2位と好スタート。ピーラポン・ソムバットウォン選手の正確なナビゲーションと、車両を労りながらもスピードを緩めないヨーター選手の堅実な走りで、レグ3で総合首位に躍り出た。
レグ5では深いぬかるみにスタックするトラブルもありながらも、その後レグ7ではSS2番手タイムを記録するなど攻めの姿勢を崩さずにそのまま首位を維持し、2位と約7分差という接戦を制して、3年ぶり2度目の総合優勝を果たした。
田口 勝彦選手は5番手という好位置からスタートし、前半は上位をキープしていたが、レグ3の悪路でフロントサスペンションが損傷してしまい、総合10位まで後退。しかし、多くの車両がスタック等に悩まされたレグ5で18台の先行車を追い抜き、トップタイムをマークして、総合6位へ順位を回復。レグ7では厳しいコースでアンダーガードやリヤサスペンションが損傷するも、果敢な走りで日本人ペア最上位となる総合5位入賞で3年目のチャレンジを終えた。
▲118号車を駆るドライバー:小出一登選手/コドライバー:千葉栄二選手組。三菱自動車のテストドライバーとして、これまでに『パジェロ』や『ランサーエボリューション』など、数々の新型車の試験を担当。現在ではテストドライバーの運転教育インストラクターや国内外イベント等でデモンストレーションドライバーを務める
社員ドライバーとして2年目の参戦となる小出 一登選手は、初日に砂埃で視界が悪い中、急停止した前走車に追突してしまいデイリタイヤを喫したり、レグ5では後輪ブレーキが効かなくなるトラブルを抱えたりしながらも、レグ3、8ではマシントラブルのチームメイトをサポート。サポートカーとしての役割を果たしながら、昨年より順位を2つ上げる総合22位でAXCRを終えた。
■チーム三菱ラリーアート総監督 増岡浩氏 コメント
「今年は勝つことしか考えていなかったので、 “三菱自動車らしい”強くて勇ましい姿を取り戻すことができて、とても嬉しいです。チーム賞も獲得でき、まさに、チーム三菱ラリーアート全員の力で勝ち獲ったリザルトです。『トライトン』の良さである、ハイスピードコースの安定性とワインディングでの操縦性を磨くことで、排気量で差のあるライバルに対抗し、アドバンテージを築くことができた結果の勝利です。また来年、さらにクルマに磨きをかけて、競争力を上げていきたいと思います」
■チーム三菱ラリーアート #112ドライバー チャヤポン・ヨーター選手 コメント
「チーム全員がしっかりと役割を果たし、完璧なクルマを用意してくれたおかげで、再び総合優勝を果たすことができ、本当にうれしいです。今年は石の多いセクションや、泥、ぬかるみなど、本当に過酷でしたが、耐久性はもちろん、ハンドリング性能が非常に高く、高速コーナーやぬかるんだテクニカルなセクションでもコントロールしやすく、最高のパフォーマンスを発揮してくれた『トライトン』のおかげで乗り越えることができました。来年は、“チャンピオン防衛”のために戻ってきます」
■チーム三菱ラリーアート #105ドライバー 田口勝彦選手 コメント
「昨年と同順位の5位ですが、我々クルーもレベルアップできました。どのSSも排気量の大きいクルマに伍するタイムで走ることができ、レグ5ではSSベストタイムも獲得しました。『トライトン』は年々良くなり、足まわり、ハンドリングの良さを活かし、悪路でもコントロールしながら走ることで、今回のチャヤポン選手の優勝につながったと思います。ラリーを終えて、もっとタイムアップできる部分も見えたので、しっかりとテストして長所を伸ばせば、また来年もいい成績を収められると思います。」
■チーム三菱ラリーアート #118ドライバー 小出一登選手 コメント
「デイリタイヤしてしまう等、精神的に厳しい部分もありましたが、非常に貴重な経験を積むことができました。私が駆った『トライトン』AT車のトランスミッションのコンポーネントは、量産車のものを使用しており、AXCRのような過酷な環境でも十分に耐え得ると実証できました。今回のラリーの中で感じた『トライトン』の持つハンドリングや取り回しの良さといった長所を、将来のクルマづくりにもフィードバックして取り入れていきたいと考えています。」
■AXCR2025 四輪部門 総合成績
1位 チャヤポン・ヨーター(三菱・トライトン) 16時間15分12秒
2位 マナ・ポーンシリチャード(トヨタ・ハイラックスレボ) 16時間23分03秒
3位 ベイリー・コール(フォード・ラプター) 17時間08分29秒
4位 ディッサポーン・マニーイン(いすゞ・D-MAX) 17時間09分32秒
5位 田口 勝彦(三菱・トライトン) 17時間37分56秒
6位 ナッサポーン・アングリッタノン(トヨタ・ハイラックスレボ) 17時間46分52秒
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22位 小出 一登(三菱・トライトン) 29時間34分31秒