2024年8月のレストア入庫を取材したマツダNAロードスターの作業が完了。納車式に立ち会った。
マツダは「新しいクルマだけでなく、古いクルマを大切にできる社会を育みたい」という思いのもとに、CLASSIC MAZDAと名づけたサービスを展開している。NAロードスターとFC/FD型RX-7を対象にした「レストア/パーツ情報サービス/復刻パーツ」がその内容だ(車種によって内容は異なる)。
今回、メーカーレストアの高い技術力を実感した。完成したロードスターは、1990年4月登録のワンオーナー車。上野浩之氏がひと目惚れし「年齢を重ねて、オープンで乗ったらカッコいいだろうな」と思い購入したクルマだ。新車時から屋根付き車庫で保管され、走行はまだ2万2000㎞のフルオリジナル車両だが、ガレージの関係で、3年ほど前からボディ状態が劣化。レストアを決意したという。
上野氏はレストアメニューの中からボディ&エクステリアに加えて、タイヤ&AC&幌交換などをオーダー。2024年9月から作業が開始された。
レストア作業は、受け入れ検査→分解→塗装→組立→完成検査の順で進行。実際の作業は広島本社内のマツダE&Tで実施され、塗装はショーカーを手掛ける熟練の職人が担当した。
横浜のマツダR&Dセンターで完成した愛車と対面した上野氏は「昨年11月末に広島に赴き、レストアの進捗を確認しました。その時点ではエンジンがまだ搭載されておらず、バラバラの状態でした。こんなに綺麗になって期待どおりです」と興奮ぎみ。
レストアの完成度は、“新車以上”に感じた。これはスペシャリストが念入りに作業を行ったからだろう。中でも塗装の仕上がりを含めボディの状態は抜群。レストア前はヘッドランプカバーの塗装は一部が剥がれ、ボンネットの艶は後退。パネルごとに微妙に色合いが異なっていた。しかし完成車はすべてが完璧。幌を新調した効果もあって、フレッシュな印象を発散している。
リフトで上げ、車体下側をチェックしてまた驚いた。足回りはアーム類まで磨き上げられ、細かな凹みや汚れは見事に一掃されていた。これこそメーカークオリティ。まさに新車同然である。作業終了後に新車時と同様の完成チェックを実施するのも、納得だ。
走行チェックは現行ロードスターの主査を務める斉藤茂樹氏が担当。「ロードスターの原点を感じながら、ピュアに運転を楽しめる最高の状態」と評価したという。
完成証とTUVの認定証を受け取った後、久しぶりに愛車のドライブを楽しんだ上野氏は「納車式後、自宅までの約15 ㎞ロードスターを運転して帰りました。レストア前と変わることなく、購入当初と同様にライトウェイトスポーツの運転を楽しむことができました。決してハイパワーではありませんが、アクセルとブレーキの操作に応じて思うように加減速でき、クルマに乗せられているのではなく、自分でコントロールしていることを感じられ、楽しく運転できました。レストアをしたことで、これから10年、15年と乗り続けることができるようになったので、免許返納まで大切に景色を楽しみながら安全運転でドライブに行きたいと思います」とコメント。
この春は「満開の桜の下をオープンで走った」という。上野氏がロードスターを購入してから35年。ロードスターは人生の半分以上を共に過ごす相棒である。長いつきあいは第2ステージの幕が開けた。