【20世紀名車】優雅な時間を提供する2シーターラグジュアリー、「1971年メルセデス・ベンツ280SL(W113型)」の美しき誘惑

1971年式メルセデス・ベンツ280SL(W113型)。280SLは1963年のジュネーブ・ショーでデビューした2代目SLの最終進化型。2代目SLの総生産台数は4万8912台。そのうち280SLは2万3885台を占める

1971年式メルセデス・ベンツ280SL(W113型)。280SLは1963年のジュネーブ・ショーでデビューした2代目SLの最終進化型。2代目SLの総生産台数は4万8912台。そのうち280SLは2万3885台を占める

美しさと卓越の作り込みを味わう贅沢。それは特別な時間

 通称“タテ目のSL(W113型)”は、SLのキャラクターを決定づけた名車である。伝説の300SL、そしてオープンパーソナルカーだった190SL、それぞれの長所を取り入れたモデルとして、1963年春のジュネーブ・ショーでデビューした。

 W113型の高い評価は美しいスタイリングによるところが大きい。贅肉のないシルエットで構成されたボディは全長×全幅×全高4285×1760×1305㎜。ぐんと踏ん張った前後トレッドがワイドな印象をかもし、細部まで吟味された造形が目を楽しませる。W113型のスタイリングはエレガントそのもの。“歴代メルセデスで最も美しいスタイリング”と絶賛する愛好家も多い。

リア

 W113型は、オープン&ソフトトップの組み合わせとともに、脱着自在なHTを標準で用意した点が画期的だった。このHTは、正面から見たときの形状が仏塔(=パゴダ)をイメージさせるところから“パゴダルーフ”と呼ばれ、SLのエレガンスを印象づけた。1台でフルオープンとしてもクーペとしても楽しめるSLの個性は、W113型が出発点だった。

 パワーユニットは年式で異なる。W113型は1963年に“230SL”としてデビュー。2.3ℓ直列6気筒OHCは、ボッシュ製の6プランジャー燃料噴射装置を組み合わせ、150㎰/20㎏mを発揮した。最高速度は200㎞/hである。1967年には250SLが誕生。250SLのM129型ユニット(150㎰/22㎏m)は7個のメインベアリングを持つ新設計ストレートシックスで、格段にスムーズな走りを見せた。250SLはブレーキが全輪ディスク式になり、燃料タンク容量が65ℓから82ℓに拡大された点も話題だった。最終版となる280SLへの進化は1968年。M129型ユニットをさらに300㏄拡大した280SL用M130型は170㎰/24.5㎏mを発揮。ファイナルギアレシオをやや低めたこともあり、加速性能が一段とシャープになった。ただしギア比の関係で最高速度は195㎞/hに下がっている。

エンジン

 紹介する280SLは、1971年にメルセデス・ベンツの当時の総輸入代理店、ウエスタン自動車(ヤナセの関連会社)が輸入し、ヤナセが販売した正規ディーラー車。W113型SLは後年、米国や欧州から並行輸入されたクルマが多く、正規輸入車は非常に少ない。しかも今回の取材車は、新車登録時に取得した“品川3”というひと桁ナンバーを維持している希少車。登録ナンバーはクルマの出自と履歴を図る尺度として重視されている。このナンバーには価値がある。トランスミッションは4速ATで、走行距離は12万㎞。オーナー歴は複数だが、親族間での名義変更。整備は基本的にディーラーで行われてきた。

 各部のコンディションは良好だった。ボディに修復歴はなく、シルバーの塗装には艶がある。レストア車両ではないが、じつに美しいコンディションをキープしている。純正ハードトップのカラーはシックな紺色。これはファーストオーナーが特別オーダーした仕様で、ホイールキャップ中央部も紺色でコーディネートされていた。タイヤは前後九分山のホワイトリボン・ラジアルを装着している。

インパネ

 室内はフルオリジナル仕様。シート素材は合成皮革のMBテックス製。クッションはしっかりとしており、目立つ汚れはない。インパネ上部に装着されたウッドトリムにもヒビ割れはなく、ベッカー社製のオーディオや純正クーラーも正常に作動した。

 メカニズム関係も良好。アイドリングは安定しており、吹き上がりもスムーズだった。280SLの機械式燃料噴射システムは調整が難しいが、きちんとセッティングされていた。遊星ギア式4速ATの変速も滑らかで、加速は力強い。ボディは堅牢。荒れた路面を走行してもきしみ音は出なかった。さすがメルセデスである。その気になればファーストカーとしても通用すると感じた。

エンブレム

諸元

真正面

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