ここ数年で日本の輸入車市場は大きく変わってきています。いまも昔も日本市場での輸入車の中心的存在はドイツ車です。しかし、近年は韓国のヒョンデが再参入したり、新たに中国のBYDが日本市場での販売をスタートしたりと、アジアメーカーが輸入車として入ってきています。
これらのブランドに関してあまりいいイメージを持っていない言葉や表現を見ることがあります。そしてそれらの表現をよく分析していくと、判断材料の要因はメーカーの母国になっている印象を受けます。 ジャーナリストとしては、そのような色眼鏡を外して「ひとつのプロダクトとして優れているかどうか?」という判断が必要になると当方は考えております。 そういった面から見れば、たとえばBYDのモデルは価格を超える価値があると感じますし、ヒョンデのアイオニック5NはBEVで内燃機関スポーツカーの乗り味を再現するというコンセプトに衝撃を受け、「こんな嘘なら騙されてもいいかも」と思ったほどでした。
このように仕事柄、国を問わずさまざまなクルマに試乗する当方ですが、同じ世代の友人とのコミュニケーションの中で、中国や韓国のクルマの話題が出てきます。その中にはクルマ好きはもちろん、そうでない人もいます。
彼らも買うか買わないかは別にしてその存在は気になっているようです。そんな話題の中でいいことも悪いこともそのまま伝えると、彼らは優れている点があることも純粋に受け入れてくれます。むしろ、「日本だからといってうかうかしていられない」という反応を見せることが多いです。
時折ニュースで「日本は実質賃金が上がっておらず、物価が変わっていない」「諸外国と比べて経済成長していない」といった話題が上がりますが、これらの実態をしっかりと若者は受け止め、海外の凄さも認めるべきという認識を持っている印象です。
こういった認識が韓国や中国のクルマに対する若者の印象や評価に繋がっているのでしょう。また、自動車は日本の基幹産業であることも理解していて、「自動車が世界一でないとこれまでの日本はない」。そんな印象を持っていることもコミュニケーションの端々からうかがえます。 国が持っているイメージを取り除いて、純粋にプロダクトとして横並びで見て比べる…そんな感覚を現在の若者は持っている、そして現実的に日本の実状を捉えているとクルマの話をすると実感することができます。
もちろん、コミュニケーションの中で日本車が優れていることを再発見する人も多いです。とくにストロングハイブリッドシステムや電動スライドドアなど、日本発祥ともいえる装備やメカニズムの採用がまだまだ輸入車では進んでいないということを説明すると、彼らは日本の自動車メーカーの凄さを再認識します。
同じ世代の友人と、中国や韓国のクルマに関してコミュニケーションを取ると、他者が優れているところはしっかりと認め、コチラが優れていることは誇りに思う。そんなフラットな視点を持っていることがわかってきます。クルマの話をすると、それ以外に工業製品やカルチャーなどについてどう思っているのか? そんなことを知ることができるキッカケとなるのです。