クラウン・エステートが登場し、4種類ある16代目クラウンがすべて出揃いました。筆者もすべて運転させていただいたのですが、それぞれで異なったキャラクターに仕上がっていて、16代目クラウンの奥深さに感銘している今日このごろです。
さて、クラウンと聞けば少し前までは「若者から遠い存在」という印象が強かったと思います。遠いというのは値段的な意味ではなく、イメージの影響が大きいものでした。
「いつかはクラウン」そんな言葉があります。それはクラウンが憧れのクルマであることを指していると同時に、年齢を重ねて落ち着いてから乗りたい……そんなイメージも抱かせていたと思います。
そのような背景もあってか、「クラウンはオジサンの乗り物」という世間のイメージもありましたし、ここ数世代のクラウンは若返りを掲げていたことも多かったです。
しかし、試乗会の現場でコミュニケーションを取ってみると、16代目クラウンは若者からも人気になっているようで、その興味の持たれ方は想定外なほどとのこと。理由はさまざまあるということで、セダンに捕らわれないボディ形状やクラウン専門店など、これまでになかった新たな取り組みも影響しているそうです。
ですが、開発陣メンバーとの会話の中で最大の理由が見えてきました。それは、純粋に作りたいものを作っている、その作り手の思いが製品を通じて伝わっているからだと直感しました。たとえば16代目クラウン第1弾となったクロスオーバーは、若手デザイナーに好きなようにデザインさせたスケッチが始まりとなっています。
このスケッチがあったからこそ、クラウン=セダンという近年呪縛のようにあった図式から脱することができ、新たな革新へのスタートが切れたのです。
そして作りたいものを作る。その姿勢はこれまでのクラウンでは考えられなかった変化をもたらしています。その一例が積載性です。これまでのクラウンはトランクにゴルフバッグが4セット積めることが伝統のひとつでもありました。
しかし、クロスオーバーではデザインとパワートランクリッド採用の関係から、積載可能なゴルフバッグは3セットです。自分たちの作りたいものを形にするために、これまでの性能要求を変えてしまう。そんな情熱が感じられる点が、若者からも受け入れられていると思います。
4種類あるクラウンの中で筆者が最も気に入ったのはスポーツ。その名が表しているように、スポーツカーを思わせるようなシャープなステアリングフィールが特徴的で、ワインディングを駆け抜けるのが楽しい1台です。
ここまでハンドリングが楽しいと、パワーユニットもクロスオーバーの2.4リッターデュアルブーストハイブリッドのようなときめきがほしいと感じてしまいますが……それは今後の展開に期待しましょう。ややハードに感じるスポーティな乗り味と、クラウンとしてはやや狭いと感じてしまうリアシートを持つクラウンスポーツは、実際に乗ってみると「若者の乗り物だな」と思わせる1台です。
クラウンの開発陣と話していると「こんなクルマを目指しました」よりも「こんなクルマが作りたかったんです!」そんな思いが熱く伝わってきます。
この「作りたかった」というスタート地点を製品として形にしているのが、若者からも支持を受けている大きな理由だと、自動車ジャーナリストの若手代表として強く感じています。