【表紙のクルマの物語】ポルシェ911/992-2(2025年5月号)

ポルシェ911は「最新モデルが最善」のポリシーを守り続ける

イラスト/岡本三紀夫

 911はポルシェの象徴である。1963年のフランクフルト・モーターショーで発表、翌1964年に発売されて以来、水平対向6気筒エンジンをリアオーバーハングに積むレイアウトと特徴あるスタイルを守り、世界のスポーツカーの代表の座に君臨している。

 現在のモデルは8代目。2024年の改良で992-2型に進化し、表紙に描かれているカレラGTSは「t-hybrid」と名付けられたシステムを搭載。911史上初の電動車となった。t-hybridはトップスピード312km/h、0→100km/h加速は3.0秒で駆け抜ける。

 クルマ好きの永遠の憧れ、911の際立った個性は、超一級のスーパーな性能を持ちながら、日常ユースにも使える点である。フラット6は、低中速域でも扱いやすい柔軟性を持ち、適度な車高はドライバーに良好な視界を提供する。

 2+2パッケージだから利便性も高い。しかも何より走りが魅力的である。だから毎日乗りたくなる。911ほどドライバーの意思に忠実なクルマはない。

 アクセルを踏めば踏んだ分だけ加速し、ブレーキを踏み込めば即座にスピードダウン。がっちりとしたステアリングの反応も心地いい。たとえ60km/hでも楽しい。満足感がある。

 つねに進化しているのも911の特徴である。パワートレーンや足回りはもちろん、使い勝手や安全性にいたるまで、ポルシェは改良の手を休めない。

 911は「最新が最善」といわれるが、それは真実である。好き嫌いはあるだろうが、クルマとしての完成度は新しいほど確実に高い。しかも911の凄いところは、進化しているにも関わらず、ドライバーを魅了する独特の味わいを継承している点である。

 最新モデルでも往年のモデルでも、乗るとすぐに「911だ」と実感する。

 独自の乗り味をしっかりと守ったうえで、磨き上げているからこそ、時代を超えてクルマ好きを魅了するのだ。こんなクルマは世界を見渡して911以外にはない。

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