自動車メディアで活動している若手という関係もあって「若者のクルマ離れについてどう思うか?」といったテーマに関して、意見やコメントを求められる機会が多くあります。そういった場合、基本的には「皆さんが思っているよりもZ世代はクルマ離れしていないと思います」と答えています。
自信を持って「Z世代はクルマ離れしていない」と思える理由は多くあるのですが、それがを強く実感するのはクルマイベントへいったときの景色です。取材でイベントへ行くと若い人が多いと実感します。
筆者は地元ということもあり、国際サーキットの富士スピードウェイへ取材や仕事で行くことが多いのですが、近年ここではモータースポーツ以外のクルマイベントも多く開催されています。9月には人気漫画『頭文字D』のイベントが開催され、10月初頭には「マツダファンフェスタ2025」が開催されました。
このようなモータースポーツがメインとなるイベントとはちょっと異なる、メーカーや車種、作品、あるいは特定のコンセプト(たとえば、クルマの生産年代や生産国などを限定)に基づいて開催されるイベントを取材すると、若い人の活気を感じます。 聞くところによると『頭文字D』のイベントで初めて富士スピードウェイを訪れたという人も多かったようで、この作品がそれだけ人々の行動力をかき立てる魅力を持ったコンテンツであることがわかります。
「最近の若者はネットやゲームでクルマのことを知った気になって……」といわれることもあります。確かにそうした一面はありますが、ネットやゲームで情報を知るからこそ、リアルを体験してみたい、リアルで見てみたい……そんな気持ちがより募っていくのではないかなと思います。
クルマ好きの先輩方からスーパーカーブームのころの話は聞いてきました。『サーキットの狼』に思いを馳せ、雑誌などで情報を集め、当時開催されていたスーパーカー・ショーに足を運んだ思い出話を聞かせてもらいました。 先輩たちの体験を整理してみると、意外にも「情報を得て、その後にリアルに実物を見る」という流れは変わっていないようです。実物を見たい、実体験をしたい、そんな思いはいつの時代もクルマ好きにとって変わらないものだと最近のイベント取材で感じました。
考えてみれば筆者がこの仕事を目指したキッカケの1つも「いろいろなクルマを実際に知りたい!」といった思いからでした。
最近のイベント取材を振り返ると、間もなく開催されるジャパンモビリティショー2025もとても楽しみです。このイベントの方向性は先ほどのものとはまた違いますが、どんな来場者がどんなふうに目を輝かせるのか、その様子に興味がわきます。もちろん、その来場者の様子を見るためにプレスデーの他、一般公開日にも足を運ぶ予定です。このショーで目を輝かせた若者や子供たちが日本の自動車業界の未来を引っ張っていく人物の1人になるかもしれません。
クルマやモビリティに関する技術やトレンドを作っていくのは人なのです。日本のモビリティの未来を占うのであれば、クルマイベントに実際に足を運んだ若い人たちのリアクションに注目するべきなのです。
にしかわしょうご/1997年生まれ、富士スピードウェイの近くで生まれ育つ。大学時代から自動車ライターとして活動開始。さまざまなメディアで自動車記事を執筆。定期的なサーキット走行や自身でのモータースポーツ参戦を通して運転技術の鍛錬も忘れない。目指すは「書けて、喋れて、走れる自動車ジャーナリスト」。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
