今月のテーマは「本格ヨンクはカッコいい」。本格ヨンクと聞くと、クルマ好きはラダーフレームと副変速機付き4WDを有するクロカンモデルでオフロードを力強く走る……そんなイメージを持つかと思います。
同年代の友人たち(特別にクルマが好きというほどではない)に話を聞いてみると、デザインの好みで本格ヨンク、あるいは本格ヨンク風なモデルを選んでいるようです。
筆者が感じる「若い世代がデザインで選ぶ本格ヨンク」の代表例がトヨタRAV4です。少し前(2022年ごろ)になりますが、とある取材でトヨタに「30代以下のユーザー割合が多い車種を教えてほしい」と聞いたところ、「RAV4が最も割合が高い」という回答を頂戴しました。
RAV4を選ぶ理由で多いのが「デザイン」だといいます。30代以下の購入者を分析すると、エンジンモデルが5割、ハイブリッドが4割となっていました。このデータから推定できる若者たちの購入意識は「ちょっとくらい燃費が悪くても、手ごろな価格でデザインが好みのRAV4に乗りたい!」といったところになるでしょう。
モノコックボディのSUVという点を挙げて、「RAV4が本格ヨンクと呼べるのか」という議論はあるかもしれません。しかし、ラギッドで武骨な印象がのエクステリアデザインは、少なくとも「本格ヨンク感」があります。
実際に筆者ので同級生のRAV4に乗っているオーナーに購入理由を聞いてみると「登場した際のデザインにほれて憧れのクルマになった!」とか「武骨な感じが好き」といった答えが返ってきました。同世代は「本格ヨンクの見た目」を理由に選んでいるようです。
RAV4のインテリアは、スイッチ類の一部はグローブを着用したままでも操作しやすい形状に工夫しています。本物が必要とする機能性を、デザインでアピールしている点なども若者の心をつかんでいるのでしょう。
また、最近デザインで選ばれていると感じた本格ヨンクがジムニーノマドです。生粋のクロカン愛好家からすれば「5ドアのジムニーなんて軟弱」と思うかもしれませんが、「ジムニーのデザインは好きだけど3ドアだと不便なので……」そんな声も多かったようです。そうした潜在需要が、ジムニーノマドの受注停止騒動にまで発展したといえそうです。
ジムニーノマドの発売前に「5ドアのジムニーが登場するってホント?」と多く聞かれたのを覚えています。それだけ買いたいと思わせるデザインなのでしょう。正直、普段はオンロードを走るので、本格ヨンクの乗り味は、日常的な使い方とマッチしないユーザーがほとんどだと思います。ただ、同世代のファッション誌編集者が「ミリタリーウオッチやミリタリージャケットを着用するのと同じ感覚だよね」と指摘していたのを聞いて「見た目で本格ヨンクがほしい」気持ちが腑に落ちました。
一個人として本格ヨンクを「ほしい!」とは思いませんが、機能を反映したスタイリングはアイコニックなものが多く、他のジャンルにはない見た目には魅力があります。スポーツカー好きの筆者も実は「コレはこれでカッコイイ」と思っています。本格ヨンクの機能に根差したデザインは、現代の若者の心をつかんでいるのです。
にしかわしょうご/1997年生まれ、富士スピードウェイの近くで生まれ育つ。大学時代から自動車ライターとして活動開始。さまざまなメディアで自動車記事を執筆。定期的なサーキット走行や自身でのモータースポーツ参戦を通して運転技術の鍛錬も忘れない。目指すは「書けて、喋れて、走れる自動車ジャーナリスト」。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
