【九島辰也のカーガイ探訪記】個人的には丸目2灯のオープンスポーツがストライク、カーデザイナーは実は話好きが多い(2025年10月号)

個人的には丸目2灯のオープンスポーツがストライク、カーデザイナーは実は話好きが多い

 デザインの評価は人それぞれなのはわかっている。好き嫌いがあるから面白いし、同じカッコいいの中でも「ウルトラカッコいい!」というのと、「確かにカッコいいけど、そこまでじゃない」なんてのにも分かれる。何を持ってカッコいいとするかは見てきたものによっても異なるであろう。もしかしたら遺伝子とかも。

 それを踏まえ、私見をいうと「このクルマ、めちゃくちゃカッコいい!」と思ったのは、フェラーリ・デイトナ スパイダー(365GTS/4)だ。大学生のときアメリカのTVドラマ『マイアミバイス』に出てきたそれである。アルマーニのジャケットを着てマリーナのクルーザーに住んでいるソニー・クロケットが操る姿に目が釘付けになった。

 スタイリングはまさにFRパッケージ。“ロングノーズ+ショートデッキ”がキレイに描かれている。デザインはもちろんピニンファリーナで、チーフデザイナーのフィオラヴァンティが手がけた。

 もう1台挙げるならトライアンフ スピットファイアだ。こちらはジョヴァンニ・ミケロッティの作品で見事なまでのFRパッケージングを描く。デイトナスパイダーをひと回り小さくしたような感じだ。自身50歳の誕生日祝いとして購入した1台でもある。13カ月かけてフルレストアしたのが懐かしい。

 クラシックカーはその後、ダットサン フェアレディSRL311、アルファロメオ・スパイダー(コーダトロンカ)と乗り継いだのだから、丸目2灯のオープンスポーツカーが好きなのがわかる。その点からも趣味嗜好は変わらない

 閑話休題。

 仕事柄これまでたくさんのデザイナーにインタビューしてきた。今回特集に登場してもらった山本卓身氏はプライベートで知り合った友人だが、それ以外は仕事として何度かお会いしている。元ジャガーのイアン・カラム氏、レンジローバーのジュリー・マクガバン氏、アストンマーティンのマレック・ライヒマン氏などは回数が多かった。

 2000年代初頭は各国のモーターショーで1年間に何度もインタビューしていたほどだ。マセラティのクラウス・ブッセ氏もそんな感じ。ある年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、マーチ卿主催の晩餐会で隣の席になり、ワイン片手にしゃべくり合ったことを覚えている。

 デザイナーは一見して気難しくも見えるが、実は話好きが多いのもわかった。今年MINIからBMWへ移動したオリバー・ヘイルマー氏がそうで、ひとつの質問にたくさん答えてくれるからこちらとしてはありがたい。若くて、頭の回転がよくて、デザインも優れているのだから、BMWデザインセンターの出世頭になることだろう。近未来アドリアン・ファン・ホーイドンク氏の後釜におさまったりして……。

 出世という意味では、2年前ベントレーのデザイン責任者になったロビン・ペイジ氏が頭に浮かぶ。ベントレーには出戻りで、数年前にインテリア責任者としてボルボへ移籍。その後デザインのトップを務め、古巣へ戻った。実績を積んでからの帰還だけに待遇はよさそうだ。

 インタビューは現役組だけでなく、リタイアしたデザイナーにも行う。その中で印象的だったのはエンリコ・フミア氏。奥さんが日本人なのでとてもフレンドリー。デザイナー対マーケティングの話は面白かったなぁ。何はともあれ、デザイナーは皆個性的である。

くしまたつや/モータージャーナリスト。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『Car Ex』副編集長、『American SUV』編集長など自動車専門誌の他、メンズ誌、機内誌、サーフィンやゴルフメディアで編集長を経験。趣味はクラシックカーと四駆カスタム

SNSでフォローする